山本周五郎時代劇 武士の魂

第十二話「失蝶記」

江戸時代末期、青年藩士・谷川主計（水田航生）の藩内は、佐幕派と倒幕派で意見が分かれ、変革期を迎えていた。幼なじみの杉永（遠藤雄弥）をはじめ、梓（松沢蓮）ら若き藩士たちと議論を深める谷川は、尊王攘夷を望む倒幕派であるものの、若き指導者として今まで以上に藩内の意見の取りまとめに奔走する日々を送る。その背景には、杉永と祝言が決まったかず子（山田朝華）への恋心を断ち切るためでもあった。
そんなある日、谷川は大砲の暴発事故で杉永を庇い、聴力を失ってしまう。当初は前向きに筆談で仲間たちとの議論に参加していた谷川だったが、次第に足手まといになっていると実感し、家督を弟に譲った上、隠居生活を送るようになる。一方、藩内では倒幕派へ流れが傾く中、佐幕派筆頭の真壁（泉知束）の挑発に乗った山西（虫狩愉司）が藩吏に捕えられてしまう。杉永から報せを聞いた谷川は、久しぶりに仲間たちの想いを知り、真壁を斬る決意を固めるが、渋る杉永に再度話し合いを提案される。
ところが数日後、谷川のもとに梓が「真壁を任せる」と伝えにやって来る。さらに、真壁が隣藩の者と密会するという情報を掴んだといい、密会場所近くで待ち伏せする算段をつける。その夜、梓から合図を受けた谷川は、真壁にむかって刀を振り下ろし…。

ギャラリーをみる