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2023年06月05日(月)唐突スギた!? 岸田総理の大号令

 今週は須黒キャスターに代わり、火曜日も「日経ニュース プラス9」を担当しました。山川キャスターとのペアは、プラス9では初めてでした。実は3年以上前にWBSでご一緒していたので、なんだか懐かしい気持ちを抱きながらお送りしました。当日のニュースのラインアップのなかで、山川さんが「特に気になるんだよね」とおっしゃっていたのが、政府の花粉症対策についての関係閣僚会議でした。

普段は見られない2ショット

 日本人の4-5割がかかっているとされるスギ花粉症。山川さんは、毎年悩まされているそうです。一方の私は、花粉症ではありません。(ダニとハウスダストのアレルギーがあるので、慢性的に似たような症状はありますが......)「花粉症の方は、とても辛そうだなあ」と思いつつ、私もいつ発症するかとソワソワしています。「国民病」とさえいわれますが、これまで政府の取り組みは目立っていませんでした。

 ところが今年4月、突然岸田総理が国会で関係閣僚会議を開くと明言。野村農林水産大臣が「私たちとしては全く知らぬ存ぜずだ。びっくりした」と話し、「答弁書の読み間違いでは」という冷ややかな見方まで飛び出しましたが、その10日ほど後に閣僚会議は開かれました。その後2カ月足らずで対策の取りまとめにこぎつけたという、異例の急展開です。

 政府の対策は、スギの伐採・植え替え、飛散防止、治療の3本柱。人工林の伐採を大幅に広げるなど「30年後に花粉発生量を半減」の目標を掲げました。「もっと早く伐採をしてもっと早く効果を出すことはできないのか!?」と思われるかもしれませんね。それがそう簡単な話ではないようです。

 やみくもに伐採を進めると森林破壊につながり、水資源を蓄えたり土砂崩れを防止したりする森林本来の重要な機能も低下して、災害が増えてしまいます。そのため、伐採後には必ず再造林が必要なのです。ここで、花粉の少ない苗木への植え替えを進めるとしていますが、その苗木が育つまでの時間も考慮すると、花粉症対策には相当の長期間を要することが想像できます。

 そもそも、なぜ日本にスギの人工林が多いのでしょうか。少し歴史をひもとくと、いろいろなものが見えてきます。戦後の日本では、住宅建築などに伴う木材需要の拡大に対応するため、政府のバックアップの下、荒廃した山にスギなどの針葉樹をどんどん植えてきました。加工しやすく、幅広い用途に使えることから特に、スギが好まれたのです。

 もともと政府の後押しで植えられたスギが、いま花粉症の「元凶」として政府主導で伐採されようとしているというこの皮肉。「異次元」という少子化対策とならんで、長年に渡って政治や行政の後手が続いた課題に取り組むという姿勢を見せる岸田総理。年内の解散総選挙もささやかれる中で......花粉症対策、なかなか根深いですね。(スギだけに!)

 私としては、とにかく政府がゴールに設定した30年後、花粉症に悩まされる日本人が減って総理の言う「日本の社会問題」が本当に解決していることを期待したいです。

片渕茜

日経ニュース プラス9 キャスター
片渕茜

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