2020年3月から「NIKKEIマネーのまなび」というチャンネル(https://www.youtube.com/@nikkeimanebi)でYouTuberをやっています。春から始まった毎週金曜の「マネーのまなびプラス9」のコーナーはこのチャンネルの出張企画(?)です。
このYouTubeチャンネル、実は「言い出しっぺ」は私自身です。3人の娘たち(大学生2人と高校生)を見ていて、「若い人に届けたいなら早くやらねば」と感じていました。いざやってみると大変で、試行錯誤の連続でしたが、最近、苦節2年半にして登録者が10万を超えました。今は「銀の盾」が届くのを楽しみにしています。
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| 登録者10万人突破の瞬間。日経のマネー・エディター山本由里さんと ゲリラライブでお祝い(10月30日) |
たまに「高井さんの動画って、どうやって撮ってるんですか」と聞かれるので、きょうは50歳のオジサンYouTuberの生態をご紹介します。
「教えて高井さん」は投資や経済を楽しく、分かりやすく解説するシリーズです。動画の長さは20-30分程度とYouTubeとしては長めです。まずは企画を練るところからスタートします。今ならインフレや円安など旬のテーマをフックにしつつ、投資や経済の普遍的な知識を高められる内容を心がけています。
最重要の川上工程は「ペライチ」作りです。「教えて高井さん」は「3つのポイント+高井さん's View」が基本構成で、それぞれのパートをさらに3項目にわけています。4×3=12の箇条書きを1枚の紙にまとめます。それはそのまま動画内で目次として使います。A4のメモ1枚を作るのに、ほぼ丸一日かかります。このメモの出来がその後の作業がスムーズに進むかを左右します。「過不足はないか」「トークは流れるか」「必要なデータや図表は」と自問しながら何度も書き直して練り上げます。
「これで行ける」となったら次はチャートや表の作成。図表は基本、すべて自分でデータを集めて最終形まで仕上げています。そのまま動画に挿入するので、スマホの画面でも見やすいよう細部まで気を配ります。これにも丸一日かかります。
その次が撮影。スタジオはなんと自宅です。今、この文章を書いている自室というか親子共用のPC部屋で撮っています。狭い部屋に大きなLEDライトを2本立てて、三脚で固定したハンディカムを自分で操作しながら撮影します。視聴者の皆さんは、まさか「高井さん」の足元に布団が二つ折りになって転がっているとは思いませんよね。
撮影は「ペライチ」だけで台本無しでやります。ライブ感があった方がYouTubeっぽい動画になるからです。台本を読み上げるのが苦手なだけ、という説もあります。台本無しなのもあって、撮影は数秒、長くても数十秒の細切れで進めます。細切れのピースの数は動画1本で80-100個くらいでしょうか。アドリブ的にその場で思いついた短いフレーズをつないでいきます。流れを脳内再生でたどりながら「次のピース」をみつける要領なので、撮影は休憩なしで一気にやります。3階の「スタジオ」に2階の家族の声が届いてしまうと、そのたび「撮影へのご協力」を呼びかけます。
撮影は短い動画でも2-3時間、難易度の高いテーマだと言い直し、撮り直しの連続で4-5時間かかります。終わると喉はカラカラ、腰はバキバキになります。クタクタですが、記憶が新鮮なうちに粗編集にとりかかります。80-100個のピースを、パートごとにつなぎ合わせ、小一時間で動画素材に仕立てます。流れが悪い、録画ボタンを押し忘れていた(けっこうやらかす)といった場合は、足りないピースを追加撮影します。
粗編集したら動画ファイルを書き出し、図表やメモと一緒に最終編集の担当者との共有フォルダにアップします。地味に時間がかかるので、ここでお疲れ様のビール。アップ作業が終わったら夕飯、というのがいつものパターンです。最近はマーケットの動きが激しいので平日のうちに「ペライチ」まで進め、図表作りは土曜日、撮影・編集は日曜日にやっています。
週明けの月曜と火曜に動画を仕上げます。図表やテロップ、効果音の挿入などの最終加工は動画編集チームがやってくれます。同時並行でサムネイルも作ります。私が文言やデザインの基本アイデアを出して試作品を作ってもらい、フォントの配置などブラッシュアップを重ねます。サムネ命です、YouTubeは。動画の試作品が出てきたら図表の最終確認やテロップのチェック。その都度、動画とにらめっこなので、時間と神経を使います。動画とサムネイルが完成したら、YouTubeと日経電子版への仕込みに進み、ツイッターで拡散用ツイートのタイマーをセットすれば、めでたく一丁上がり、となります。
「教えて高井さん」はテーマや内容などすべて自分で決めて、「今、これを伝えたい」と考え抜いた動画を作っています。工程をご覧の通り、YouTuberも楽ではありませんが、エネルギーと手間をかけて「渾身の1本」を作るのは、やりがいがあって、何より楽しいものです。派手な動画が多いYouTubeの中では地味な草食系のチャンネルですが、「まだ」の方はこの機会にチャンネル登録と高評価、通知オン、よろしくお願いします。

日経ニュース プラス9 キャスター
高井宏章
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