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2022年09月12日(月)芸術の秋 ミュージカルに学ぶ「分断の悲劇」

 9月に入り、少しずつ秋の気配を感じられるようになりました。いよいよ到来、芸術の秋!ということで、今回は私が大好きなミュージカルについて書いてみます。ただ、ミュージカルにはアレルギー反応があるという方も多いですよね。タモリさん風に言うと「なんで急に歌いだすの?」といったところでしょうか。今回はそんな方でもひょっとしたら「ちょっと見てみようかな」と思えるかもしれない、ミュージカルの楽しみ方をご紹介します。

コロナ前には本場NYにも見に行きました


 ミュージカルには「アラジン」や「アナと雪の女王」のようにファンタジーの世界を楽しめる作品もありますが、社会問題を問う作品も多いです。私自身、ミュージカルを通して勉強になったことが少なからずありました。

 その代表が「ウエスト・サイド・ストーリー」です。元々1957年にブロードウエーで上演、1961年に映画化されると日本でも大人気となり、ご存じの方も多いと思います。20世紀版「ロミオとジュリエット」ともいわれる傑作の舞台はマンハッタン。貧しい白人の若者グループ「ジェッツ」とプエルトリコからの移民グループ「シャークス」が縄張り争いを繰り広げるなか、ジェッツの元リーダー・トニーと、シャークスのリーダーの妹マリアが恋に落ちます。2人の純粋すぎる愛は対立するグループのはざまで板挟みになり、悲劇の引き金を引くことになってしまいます。

 去年、スティーブン・スピルバーグ監督によって60年ぶりに映画化されました。往事を見事に再現した街並みをバックに繰り広げられる素晴らしい音楽と豪華絢爛なダンスシーンは本当に見ごたえがあります。ただ、すでに「不朽の名作」と言われているものを、なぜこの時代に?と不思議に思っていました。

 「ミュージカルで描かれた1957年のシャークスとジェッツよりも私たちが直面している分断の方が深刻だ。人々の分断は広がり、もはや人種間の隔たりは一部の人の問題ではなくなった。観客すべてが直面する問題だ」とスピルバーグ監督は20世紀スタジオが公開した特別映像のなかで語っています。「分断によって引き起こされる悲劇」こそが、リメークされた理由なのです。

 いま世界中で分断をきっかけに様々な紛争が起こり「日経ニュース プラス9」で毎日のようにお伝えしています。「ウエスト・サイド・ストーリー」の最後にマリアが「憎しみで人を殺すなら、私はあなたたちみんなを殺す」というセリフがあるのですが、憎しみで戦争や差別が繰り返される、そんな悲劇が少しでもこの世からなくなればいいのにと切実に願います。ミュージカルを通して、今の世の中を考える秋......いかがでしょうか。

須黒清華

日経ニュース プラス9 キャスター
須黒清華

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