「実質実効為替レート」という考え方があります。他国の通貨に対する円の総合的な実力を表すものです。そのレートが足元で68.71となり、およそ50年ぶりの低さに近づきました。対ドルで4年8カ月ぶりの円安水準になったことばかりに目がいきがちですが、実は主要通貨に対する円の実力は歴史的な「低評価」となっているわけです。
通貨は国の経済力を表すといいます。コロナ禍からの回復が遅れて7~9月期の実質国内総生産(GDP)は前期から年率3.0%減り、プラス成長が続く米欧との差は歴然です。低成長を背景に物価も思うように上向かず、さらには量的金融緩和の縮小に踏み出した米欧とは対照的に日銀が金融緩和の継続を打ち出したことも歴史的な低評価の一因です。
かつては「円安=輸出採算の好転」という理屈で語られることも多かったのですが、多くの製造業が海外に拠点を移したことで、円安による押し上げ効果も過去に比べると小さくなりました。そこに新たに加わった波乱要素が原油などの資源高です。資源の多くを輸入に頼る日本では、それでなくても高い原油を買うのに安い円をドルに換えて払うので輸入代金が大きく膨らんでしまいます。むしろ円安によるデメリットも鮮明になっています。
「対ドルで115円を試す」との声も出始めた円安。日本経済や私たちの暮らしにどんな影響を与えるのか。注意深く見つめていきたいと思います。

日経ニュース プラス9 プロデューサー
森松博士
記事は日経プラス9クラブ会員向けのメールマガジンで毎週金曜日に配信しています
⇒詳しくはこちら