日経おとなのOFF
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誇りの地 巡礼 地域の魅力を再発見する
2014.09.09
<9月の旅先>横浜 田谷の洞窟
荘厳な空気が漂う、横浜にある洞窟。風に揺れるロウソクのほのかな明かり。暗闇に浮かび上がるのは、古の彫刻です。修行僧たちの修練の場だった洞窟の中では水の音だけが響き渡ります。無心でノミを振るった修行僧たちの想いを感じてみませんか。
神奈川県横浜。
鎌倉市と隣接するこの地には、鎌倉時代の史跡が残されています。
「朝比奈(あさひな)切通(きりどおし)」。1241年、鎌倉幕府の要職に就いていた北条泰時が、鎌倉と横浜を結ぶ重要な経路として造らせた峠道です。
伝説では、一人の武将が一夜で切り開いたとされています。その男が、朝比奈三郎義秀でした――
横浜には、義秀ゆかりの地があります。真言宗の古刹・定泉寺(じょうせんじ)。寺がこの地に創建される前、義秀はここに居を構え、篤く信仰していた弁財天を洞窟の中に祀っていたと伝えられています。
寺が管理する田谷山喩伽(たやさんゆが)洞(どう)が、その洞窟。田谷の洞窟とも呼ばれ、市の地域文化財に登録されています。鎌倉時代以降、洞窟は真言密教の修行場として使われると共に、およそ500年に亘って掘り進められました。壁面には、修行僧たちが刻んだ300を超える彫刻が残されています。
洞窟の全長は、およそ1キロメートル。現在公開されている経路は、250メートルほどです。あまたの修行僧たちが、彫刻を刻むことで修練を重ねて来た洞窟。特別に撮影が許されました。