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ニュース報道の心

2016年12月9日(金)「政治的な正しさ」疲れのその先は? 木村恭子

 12月に入り、今年を振り返るニュースが多くなりました。私も6日の放送では、2016年の日経MJヒット商品番付を取り上げました。東西の横綱は、ゲーム「ポケモンGO」とアニメ映画「君の名は。」。いずれも「世代を超えて大ヒットし、現実社会の人の動きや消費活動まで動かした」(7日の日経新聞朝刊から)ことが選考理由だそうです。


 私が気になった一つは、東の前頭「トランプ現象」です。寸評には「過激な発言を繰り返したトランプ氏が米次期大統領に。円安・株高が進むなど日本経済にも大きな影響」とありました。


 そういえば、英英辞典などを発行するオックスフォード大学出版局が発表した「イギリス版流行語大賞」といえる"Oxford Dictionaries Word of the Year 2016"で今年注目された言葉に選ばれた"post-truth"も、トランプ現象に関係しています。


 日本語では「ポスト真実の」「真実後の」などと訳すことができる"post-truth"ですが、オックスフォード英語辞典(OED)によると「世論形成にあたり、客観的事実が感情や個人的な信念への訴えかけよりも影響力が低いという状況、またはそれに関連した状況」とのこと。


 英国の欧州連合(EU)離脱や米大統領選でネット上の使用頻度が急上昇し、昨年と比べて2000%増。特に「政治」(politics)と組み合わせて使われることが多いそうで、その"post-truth politics"(ポスト真実の政治)の代表例がトランプ氏の勝利といえます。


 トランプ氏が勝った要因については、よく「『ポリティカルコレクトネス』(政治的な正しさ)をあまりにも重視しすぎる最近の米国の風潮に不満を持つ人」(5日の日経新聞夕刊から)が多くなったことが挙げられます。


 ポリティカルコレクトネス(politically correctness)、通称「ポリコレ」の意味は、OEDによると"The avoidance of forms of expression or action that are perceived to exclude, marginalize, or insult groups of people who are socially disadvantaged or discriminated against"(社会的に恵まれない人々や差別を受けている人々のグループを排除したり疎外したり侮辱すると認められる表現や行動の形式を避ける行為)とのこと。


 5日の日経新聞夕刊で大石格編集委員は「特にオバマ大統領の就任後、強く推奨されました。米国の小売店の年末セールでは、キリスト教徒以外の人に配慮して『メリークリスマス』と表示できなくなっています」とし、「こうした状況に不満な人々が、言いたいことをズバズバ言うトランプ氏を支持したようです」と解説しています。つまり、「ポリコレ疲れ」を感じている米国民の存在がトランプ氏の勝利の一因というわけです。


 もちろん「政治的に正しい」ことは批判の余地のないことですが、それが行き過ぎると言葉狩りにつながり、さらには、トランプ氏勝利にみるように「右翼化」を助長しかねない危惧もあります。日本では、ポリコレに過剰に反応し行き過ぎた規制を求めることを皮肉ってか、インターネット上で「ポリコレ棒」といった言葉を最近見かけるようになりました。ポリコレを根拠に批判されることを「ポリコレ棒にたたかれる」と表現されています。


 ただ、「ポリコレ棒」が流行語として拡大しすぎて、まっとうな指摘さえも「ポリコレ棒」扱いされるようになるとすれば、それはそれで困ったことです。


 「来年の事を言えば鬼が笑う」といいますが、気の早い私は来年は何が流行するのかもう気になります。7日の日経MJで、来年は「人のココロを刺激し、世界が注目する五輪に向けた『カウントダウン消費』が始まる」とありました。2020年の東京五輪・パラリンピック開催まで残り3年となる2017年の10月には、五輪仕様の自動車ナンバープレートの交付が始まるそうです。同紙では「いち早く東京五輪を味わいたい人におすすめ」とのことです。


 皆さま、良いお年をお迎えください。


日本経済新聞
編集委員兼政治部シニア・エディター兼キャスター
木村恭子


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