今年も残すところ2週間となりました。英国のEU(欧州連合)離脱を巡る国民投票、米大統領選挙、イタリアの憲法改正を問う国民投票――。欧米で「反移民」を掲げる勢力が強まる一方で、日本では外国人の就労にかかわる法律が11月に成立しました。
ということで、年内最後の今回は「日本が外国人の力を活かし、労働力不足の緩和につなげるにはどうしたらいいか」について少し触れたいと思います。
まず全体像から。日本で働く外国人は約91万人。うち最多が日系人など(37万人)で、次いでアルバイトなどをしている留学生(19万人)、技能実習生(17万人)、専門職(17万人)。そして、外交上の例外として受け入れている「特定活動」(1万人)と続きます。
今回成立した法律は2つ。まず、働きながら技能を身につける外国人技能実習制度を一部見直す法律。もう1つは出入国管理・難民認定法の改正。技能実習制度は建設業、製造業などに限っていた職種に「介護」が加わります。優良な受け入れ先なら実習期間が最長3年から同5年に延びます。
また、実習生を受け入れる企業・団体を監督する機構が新設されます。違法な長時間労働や最低賃金を守らない問題が後を絶たないためです。不正を監視する仕組みを作ることで、制度を充実させたかたちです。
しかし、この制度の目的は途上国の人材育成への貢献。なのに受け入れ先の大半が外国人実習生を「低賃金の労働力」ととらえています。建前と現実のギャップが違法行為の温床につながっています。
重要なのは、国際貢献を建前とした今の技能実習制度の枠組みから脱すること。人手不足が深刻な分野については、一定の技能を備えた外国人を「働き手」として受け入れるべきだと思います。外国人を受け入れてきた欧米で今まさに起こっていることを考えると、まず日本人限定で求人し、十分に集まらない場合は外国人で求人するなど、国民が納得した分野で実施する仕組みを設けてはどうでしょう。
改正入管法成立では、在留資格に「介護」が加わります。これについては、受け入れ経路をもっと多様化した方がいいと思います。取材で訪れた介護現場でお目にかかる外国人スタッフの多くは、日本がフィリピンやベトナムなどと結んだEPA(経済連携協定)の枠組みで来日した人たちです。アジアの周辺国でも高齢化が進み、国境を越えた人材争奪戦がすでに始まっており、今のままでは日本は取り残されてしまいかねません。
政府は今後、専門性の高い知識・技術を備えた「高度人材」を含め、外国人の受け入れを増やす方針です。忘れてはならないのは、外国人も「生活者」という視点。本人の労働や住宅の環境整備だけでなく、家族も視野に入れた医療や教育、地域社会での共生といった課題にも、皆で取り組まなければならないですね。
日本経済新聞
編集局キャスター長
阿部奈美
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