先日、5回目の核実験を強行した北朝鮮。私は最近、北朝鮮のとる行動を「不良息子の戦略」と呼んでいます。この場合の親にあたるのは中国です。素行不良で近所の住人は心配しており、時には注意もするのですが、肝心の親が本気で叱ってくれません。隠れて小遣いを与え、生活の面倒を見ています。息子は親のことを「どうせ最後はかばってくれるだろう」と高をくくっているため、非行は激しさを増すばかりです。自宅には凶器を保持しています。
親は住民から来る苦情に対し、表向き「ちゃんと叱っておきますから」と同調する姿勢を見せます。今回も中国の王毅外相が日韓両国の外相との電話協議で、北朝鮮への新たな国連制裁決議に前向きな考えを示しました。ただ、どこまで本気で厳しい制裁を課すのか、はなはだ疑わしいと言わざるを得ません。
北朝鮮の社会情勢が不安定化すれば、中国には多数の難民が押し寄せます。息子に小遣いを与えなかったら、「逆ギレ」されるリスクがあるわけです。非行が表沙汰になれば、親も無傷ではいられません。穏便にやり過ごしたいのが本音なのです。
この局面をどう打開するか。9月13日火曜日にゲストでお越しいただいた元在日本大使館政治軍事部部長のケビン・メアさんは、2つの選択肢に言及しました。1つは中国に対して制裁を課すこと、もう1つは、北朝鮮に対する軍事的オプションに踏み切ることです。つまり、親を管理不行き届きで処分するか、息子を摘発するかしかない、というわけです。
しかし、2つとも、可能性は低そうです。肝心の警察があまり乗り気ではないからです。オバマ米大統領の外交の考えは「話せば分かる」。交渉で事態を打開するのが基本姿勢です。ことさらに米中関係に波風を立てたくはないでしょうし、軍を動かすのはもっと嫌でしょう。地域の治安を守る警察官は、住民の話は聞いてくれるものの、強硬な手段は取りたくないのです。
米国はこれまでも北朝鮮への空爆を検討したことがあります。クリントン政権時代の1994年とブッシュ政権時代の2003年です。いずれも韓国や中国が反対して、実行しませんでした。メアさんは「私は当時、北朝鮮を攻撃すべきだったと思っている。ただ、難しい判断だったことは事実。今回、空爆をするなら、韓国の首都ソウルが攻撃にさらされるリスクが高い。覚悟がいるだろう」と指摘します。
気になるのは、警察が人事異動の季節を迎えていることです。次の警察官はこの問題にどんなスタンスで臨むのか。メアさんの見方はこうでした。「私が米国務省の日本部長だった時にヒラリー氏は国務長官だった。彼女は現実的でタフ。中国と北朝鮮に対しては、今までよりも強硬的な政策をとるだろう。トランプ氏はスピーチなどを聞いても、具体的に国際問題を考えていない。正直、よく分からない」
次の警察の体制次第で、対応は随分と違ってきそうです。打開策が見えない中、不良息子は着々と殺傷能力の高い凶器を自宅に貯め込み始めました。事態は切迫しています。日経プラス10では過去3週続けて火曜日に北朝鮮問題を取り上げました。今後とも、動向を注視したいと思います。
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