終わってみれば、日本のメダル数が過去最高だったリオデジャネイロ五輪。ちょうど12時間の時差のもと、昼夜逆転状態で競技をライブ観戦し寝不足気味だった日々さえもなつかしく思える「リオ五輪ロス」状態の人が少なくないようです。
かくいう私もその一人。特に開催される前に番組で、アシックスが開発した日本選手団の競技用ユニホームの機能性の高さを取り上げたこともあり、各国選手のファッションも気になった17日間でした。
圧巻だったのは、なんと言っても各国によるファッションショーさながらの開会式です。米フォーブスが5月に特集した"The Most Stylish Uniforms from the Rio Games"(リオ五輪で最も格好いいユニホーム)で1位に選ばれ前評判が高かったカナダは、シャツがジャケットの裾からのぞくスタイル。ミラノコレクションにも出展しているトロント出身の双子兄弟によるブランド「DSquared2(ディースクエアード)」のものでした。
フォーブスで2番目に選ばれたのは英国で、歌手ポール・マッカートニーさんの娘、ステラ・マッカートニーさん(ビートルズを知らない若者世代にとっては「ステラ・マッカートニーさんのお父さんがポール・マッカートニーさん」のほうが通じるくらいの人気デザイナー)が手がけました。
英国の国旗「ユニオンジャック」を象徴する赤、青、白を基調に、英国紋章をデザインに取り入れ、国を構成するイングランドとウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの地域を表現したそうです。独立問題に揺れ続ける英国だけに、マッカートニーさんも気を使っているのかな、とうがった見方が頭をよぎりました。
ベスト5にアジアから唯一入ったのは韓国でした。トラッドカジュアルを得意とする同国ブランド「BEAN POLE(ビーンポール)」のもので、ネイビーのブレザーと白のパンツの組み合わせ。ブラジルで流行しているジカ熱対策のための防虫剤を服にしみこませる工夫を施したそうです。
さて、日本は、というと。日の丸をイメージした赤いブレザーに白のパンツで登場した姿は(あらら?)52年前の東京五輪をほうふつさせるデジャブ感が・・・・・・。「原点回帰」「無難」「真面目」とはいえますが、正直、他国と比べると堅苦しい感じで、遊び心が不足しているようにも思えました。
デザインは日本オリンピック委員会(JOC)の公募で、前回のロンドン大会に続き選ばれた高島屋が担当し、素材や縫製にこだわったそうですが、残念なのは、デザイナーの「顔」が見えないことです。たとえ百貨店が請け負ったとしても、カナダのように同国の百貨店ハドソンベイが製作を担当し、デザインは顔の見えるブランドに託すというケースもあります。
かつて日本も、森英恵さんや芦田淳さん、高田賢三さんが公式ユニホームを手掛けた時代がありました。今でも世界で活躍する旬な日本人のデザイナーがたくさんいます。8月27日放送の「ファッション通信」(BSジャパン)で知ったのですが、レディ・ガガやEXILEの衣装を手掛ける中里唯馬さん(「YUIMA NAKAZATO」)が今年7月、森英恵さん以来、12年ぶりに日本人としてパリ・オートクチュール・コレクションに参加したそうです。
スポーツブランド関係では、マッカートニーさんもコラボレーションしているアディダスと組んだ日本人デザイナー2人が手掛ける「HYKE(ハイク)」や、ナイキとコラボレーションした阿部千登勢さん(「sacai(サカイ)」)も、世界中にファンがいます。
豪州選手団のハーフパンツやポルトガルのジーンズ姿まであり、今の気分は「カジュアル」なのだと感じた開会式。セレモニーとはいえ、トレンドや国の個性もあわせもった「デザイン」も重要なのだと気付いたリオ五輪でした。
さて、次の舞台となる2020年の東京五輪での日本のユニホームはフォーブスで取り上げられるくらい"stylish"であること(できれば1位の金メダル!)を期待しながらも、まずは8日から始まるリオデジャネイロ・パラリンピックを見なくては!ですね。皆さん、寝不足にご注意ください。
日本経済新聞 編集委員兼政治部シニア・エディター兼キャスター
木村恭子