夏の北海道に台風が上陸したのは35年ぶりだそうです。しかも3つ立て続けに襲来し、収穫間近だったじゃがいも、タマネギなどに深刻な被害も出ており心配です。
台風の合間を縫うようにこの夏、2回札幌を訪れました。35年前の夏、台風が直撃した時、大学2年生だった私は北海道を旅行中でした。当時はやっていたのが、大きなリュックを背負い、国鉄の周遊券を使った「カニ族」と呼ばれた貧乏旅行です。新幹線はもちろん、青函トンネルすらなかった時代、北海道は遠く、学生にとって憧れの地でした。
演歌の歌詞のように上野発の夜行列車に乗り、青森で連絡船に乗り換え、ほぼ1日かけて北海道にたどり着くと、はるばるきたぜ函館という実感が沸いたものです。周遊券は東京から往復2万数千円、期間は3週間で、道内は急行も自由席なら乗り放題。宿は安いユースホステルで、全国から貧乏学生が集まっていました。
中には1週間程度で帰る旅行者もおり、そういう人を見つけると、期限切れが近づく手元の周遊券と交換してもらい、滞在期間を延長します。私もその口で、北の大地をあちこちふらふらしながら1カ月ほど経ち、サークルの合宿に間に合うように帰ろうかと思っていた矢先の台風直撃で往生したのを覚えています。
そんな北海道からこの夏、活気あるニュースが入ってきました。番組でも紹介しましたが、今年3月に開業した北海道新幹線がお盆休みの8月10から18日に利用者が10万人を突破したのです。訪日外国人客も多く、この夏の北海道は活気がありました。高橋はるみ知事は昨年、4選を果たしましたが,このときの公約の1つに「来道外国人客を倍増の年間300万人」がありました。このほどこの目標を500万人に上方修正しました。
高橋知事は今年、8月8日を道民笑いの日とし、記念イベントを開くなど集客に向けた自助努力を重ねています。地元のプロ野球球団、北海道日本ハムファイターズは逆転優勝に向けて連日、熱戦を繰り広げており、これも道外から観光客を集める強力なコンテンツになっています。
地域経済の活性化、地方創生など、これまでも掛け声はいろいろかかりましたが、北海道はバブル崩壊後、北海道拓殖銀行が経営破綻し、経済は低迷期が続きました。基幹産業とも言える農業、酪農も環太平洋経済連携協定(TPP)への懸念が根強く残ります。インバウンドの追い風をきっかけに、経済活性化を目指す北海道に、これからも注目していきたいです。
(日本経済新聞 編集委員兼キャスター 鈴木亮)
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