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ニュース報道の心

2016年6月17日(金)舛添知事の辞職 世論読み違えた自民党 山川龍雄

 舛添要一・東京都知事が6月21日付で辞職します。15日の番組でも申し上げました
が、舛添氏が終始意識していたのは、トミン(都民)でなく、ジミン(自民)だっ
た、というのが率直な感想です。都議会の最大勢力である自民党さえ押さえておけ
ば、自分が辞めることはないと高をくくり、粘りに粘った舛添氏ですが、最後はその
自民に辞職を迫られ、観念しました。


 では、自民党がどこを向いていたかと言えば、決して舛添氏への期待や同情ではな
く、参議院選挙への影響だったと思います。自民のスタンスは参院選との見合いで、
次第に変化しました。初期段階では続投してもらう方針でした。2009年の総選挙で自
民党が大敗を喫して下野した際、舛添氏は自民党を飛び出した経緯があります。その
ため、舛添氏のことを快く思っている自民党の議員はほとんどいません。ただ、舛添
氏に代わる強い後任候補が見当たらないため、今回は舛添氏を陰で守り、貸しを作っ
た方が得策と判断していました。


 ところが、この読みが甘かったことを思い知らされます。舛添氏が頭角を現したの
は、テレビの討論番組がきっかけです。どんな相手でも歯に衣着せぬ発言でやり込め
てしまう。生来、攻撃型の性格なのでしょうか、謝ることがあまりにも下手でした。
初期段階で頭を下げればよかったものを、すべて論理で返そうとしたため、国民から
総スカンを食ってしまいました。


 これに慌てたのが自民党です。連日この様子が報道され、東京都とは直接関係のな
い地方でも、参院選の自民党候補者が舛添氏の批判をぶつけられるようになりまし
た。これでは参院選を戦えません。ここに至って、自民党は舛添氏を辞職させる方向
に舵を切ります。


 ただ、1つ問題が残りました。あまり早く辞めてもらうと、都知事選が参院選と重
なってしまうのです。この問題が参院選で争点化されるのは避けたい。そう考えた自
民党は、9月まで舛添氏の続投を認めようとします。舛添氏はリオデジャネイロ五輪
の閉会日のセレモニーでリオデジャネイロ市長から五輪旗を受け取る。それを花道に
辞職するというシナリオです。


 ところが、この「9月説」も世論の反発を招きます。万策尽きた自民党は舛添氏の
早期辞職を画策します。都議会幹部を中心に、自発的に辞職するよう促しました。と
ころが舛添氏はこの打診を拒否します。胸中には、「自民党にハシゴを外された」と
いう思いがあったのかもしれません。都議会を解散する可能性までちらつかせ、自民
側に動揺が走りました。


 自民党都議らによる舛添氏への説得は15日未明まで続きました。そして、日本経済
新聞の取材によれば、舛添氏に最後に引導を渡したのは安倍総理でした。15日朝、首
相は舛添氏に電話を入れ、「最後は政治家として自ら退く判断をしてほしい」と伝え
たそうです。


 今回の問題は、舛添氏本人が蒔いた種から生まれたことは間違いありません。た
だ、ここまで騒動が長引いた責任の一端は、舛添氏に過剰に期待を抱かせた自民党に
もあるように思えてなりません。テレビ、新聞に加えて、ネットなどでもニュースが
伝播され世論が形成される時代。都知事の不祥事は、東京都だけの問題ではなく、た
ちどころに国民の関心事となり、地方の選挙戦にまで影響を及ぼすことになりまし
た。世論の反発を甘く見ていた自民党は今、一億総批評家時代の恐ろしさを、改めて
強く意識したのではないかと思います。


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