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ニュース報道の心

2016年5月27日(金)G7サミット 孤立主義との戦い 山川龍雄

 G7サミット主要国首脳会議の取材で伊勢志摩を訪れました。伊勢市にある国際メデ
ィアセンターの中でこの原稿を書いています。現地の印象としては、とにかく警備員
の数の多さが半端ではありません。主要道路はどこを見ても等間隔で警察官やSP(警
護官)が立っています。サミットの期間中、三重県と愛知県は、全国からの応援を含
め2万人を超える警察官が警備にあたるそうです。


 伊勢神宮参道のお土産屋の店員さんやタクシーの運転手さんは「ここ数週間は警備
が多いせいか、観光客が減って商売にならない」とぼやいていました。交通規制で渋
滞しているところも多く、地元の人たちは苛立っている様子です。サミットは伊勢志
摩を世界に発信する格好の機会であることに違いありませんが、地元の受け止め方は
複雑なようです。


 さて、肝心のサミットの話に移りましょう。議長国の声明を聞く前の段階で執筆し
ていますので、確定的なことは言えませんが、安倍晋三総理が重視していた財政出動
への協調には、表面上の賛同は得られたようです。ただ、各国がそれぞれの事情に応
じて努力するといった玉虫色の内容になりそうで、財政投入の規模やタイミングにつ
いて、拘束力は伴いません。


世界経済の景気認識についても、「危機的(クライシス)という表現は強過ぎる」
と一部の国から注文がついたようです。世界経済を巡る過度な悲観が和らいだタイミ
ングだったため、主要国の危機感が低下していたことが背景にあると思います。3ヶ
月前だったら、もう少し明確な合意を取り付けやすかったかもしれません。


 この状況を踏まえ、「G7の存在意義が薄れている」といった論調の記事も目にしま
すが、私はそうは思いません。25日水曜日の番組中でもリポートしましたが、私は現
在のG7サミットの最大のテーマは「孤立主義との戦い」だと思っています。今回、参
加した首脳たちが関心を寄せる「裏テーマ」は、トランプ旋風とイギリスのEU離脱
問題。アメリカとイギリスと言えば、G7の中心的存在であり、戦後秩序を形成するう
えで、主導的役割を果たしてきた国です。その両国が、状況次第では、自国の利益の
みを優先する孤立化の道を歩もうとしているのです。


 また、サミットの陰の主役は、海洋進出を強める中国であり、クリミアを併合した
ロシアです。両国もまた、力による領土、領海の拡大を進めようとする自国優先主義
に突き進んでいます。


 さらに、タックスヘイブン(租税回避地)の節税実態を暴露した「パナマ文書」問
題を受け、サミットでは課税逃れ対策が重要テーマになりました。これも詰まるとこ
ろ、個人レベルで「自分さえ良ければ」という自己中心主義が蔓延していることを示
しています。国家レベルでも、個人レベルでも孤立化が進み、富める者と貧しい者の
間の格差が広がっています。その格差拡大のなれの果てに戦争が起きてしまうこと
は、歴史が証明しています。


 年に一度、G7の首脳が顔を合わせ、「そんな過ちを繰り返してはならない」と確認
し合うだけでも、貴重な機会です。「サミットは孤立化の流れを止める防波堤となれ
るか」。そんな視点で取材を続けています。金曜日はオバマ大統領の広島訪問を追い
かけます。


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