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ニュース報道の心

2016年5月20日(金)介護離職ゼロへ 利用者目線の改革を 阿部奈美

 政府は今月18日、「ニッポン一億総活躍プラン」をまとめました。「国内総生産
(GDP)600兆円」「出生率1.8」と並ぶ新3本の矢として掲げられているのが、「介護離
職ゼロ」です。家族の介護を理由に離職する人は年10万人とされていますが、そうい
う人たちを2020年代初頭までになくすというものです。


 介護離職ゼロに向けた具体策は、(1)20年代初頭までに介護の受け皿を50万人分整
備、(2)介護士の給与を17年度から月1万円程度アップ、(3)介護休業給付の給付率引
き上げなどです。(1)と(2)は本丸の介護インフラの整備ですから、急ピッチで進めて
いただきたいですが、実は3つ目の介護休業の見直しも働き手が仕事を続けられるか
どうかに直結するところなので同時並行で進めなければならない重要なポイントだと
思っています。


 育児・介護休業法では、社員が家族の介護のために通算93日まで休むことを企業に
義務付けています。休んでいる間も賃金月額の40%は雇用保険から給付されます。こ
の率が上がることで助かる人は多いはずです。利用者目線で考えると、介護休業の分
割取得も早く可能にしてもらいたいです。


 今の制度ではこの「通算93日まで」という介護休業は介護が必要とする家族1人に
つき原則1回しか取れません。症状が回復して復職した後、同じ家族が再び介護が必
要な状態になっても、前回と同じ傷病の場合、たとえ取得できる日数が残っていて
も、もう一度取ることができないのです。


 このため、介護に直面した40~50代の間では「もっと大変な時に備えて取っておき
たい」「3カ月も続けて休んだら、戻ってくる場所がなくなる」といった理由から取
得をためらう人が多く、介護休業の取得率は3%程度にとどまっています。ここを改
善すると、介護離職者がかなり減るのではないかと思います。


 国はようやく分割取得ができるように制度の見直しをする方向で準備を進めていま
すが、それに先駆けて、独自に介護休業の分割取得を認めるなど利用者目線で工夫す
る企業も出てきています。積水ハウスは2014年4月から介護休業を最長2年に延ばした
のに続き、今年4月からは従来2週間単位でなければ取れなかった制限をなくしました。
パナソニックは今年4月から、親の介護に当たる社員の負担を減らすために最大300万
円の融資制度を新設しました。それとは別に、休業した社員に半年間は賃金の7割相
当(従来は4割)を支払うほか、年9万円を上限に介護費用の半額を補助する制度も導
入しました。


 総務省の調査によると、働きながら介護をしている人は推計290万人で、うち40~
50代が170万人に上ります。会社の屋台骨を支える中核社員の介護離職をどう防ぐか
は、企業にとっても喫緊の課題です。日本の男性の生涯未婚率(50歳時点での未婚
率)はすでに2割を超えています。これからは女性であれ、男性であれ、親の介護や
生活支援などでキャリアが途切れたり、時間に制約のある働き方しかできない時期が
訪れるかもしれないわけです。介護インフラの整備と同時並行で、柔軟な働き方が可
能な職場に改革することも重要だと思っています。

               (日本経済新聞 編集局キャスター長 阿部奈美)


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