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ニュース報道の心

2016年3月18日(金)消費増税の延期シナリオと日本の活路 山川龍雄

消費増税の先送りをめぐる議論が活発になっています。経済の専門家の間でも意見
は分かれていますが、年初来の経済指標やマーケットの低迷を受け、「先送り派」が
増えているような気がします。私もその方向に傾きつつあります。不況というほどで
はありませんが、景気の足腰はふらついています。このタイミングでの増税は、減速
気味の日本経済にとどめを刺すことになるような気がしてなりません。


 財政健全化の必要性に異論をはさむ人はいないでしょう。問題はその方法です。歳
出と歳入のギャップを消費増税によって埋めていくのか、経済成長による税収増を目
指すべきなのか。安倍政権はこれまで後者の道を選択しつつも、5%から8%への増税
も実施しました。つまり、アクセルとブレーキを同時に踏んだわけです。その結果、
日本の景気指標は強弱が交錯し、最近の気候のように「三寒四温」の状態が続いてい
ます。これをどう受け止めるべきか。アベノミクスの失敗なのか、消費増税が足を
引っ張ったのか。ここでも専門家の意見は割れています。


 ただ、はっきりしているのは、第2次安倍政権発足以来、税収は毎年、上振れが続
いていることです。景気を良くし、法人税や所得税を増やす。これが、財政再建の前
提条件ではないでしょうか。いくら財務省が机上で税率を掛け合わせて税収を計算し
ても、肝心の景気が低迷してしまえば、絵に描いた餅になります。仮に増税を実施し
たことで個人消費が落ち込んだ場合、追加で景気対策を打たなければなりません。景
気低迷による税収減と景気対策による歳出増のダブルパンチで、むしろ、2020年度の
基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化の目標は大きく遠のいてしまうので
はないでしょうか。


 メタボの人が健康促進のためにダイエットに取り組むことに誰も異論はないでしょ
う。しかし、その人が風邪を引いたとします。ここでも変わらず食事制限と運動を続
けたら、病気が悪化してしまいます。健康を害したら、何のためにダイエットに取り
組んでいるのか、目標を見失います。現在の日本経済は激しいダイエットを続ける
と、取り返しのつかない健康状態に陥ってしまうのではないか。それが現時点での私
の見立てなのです。


 もちろん、消費増税を延期すれば、全てが解決すると言っているのではありませ
ん。そもそも、なぜ消費増税が必要なのか。その目的は、膨らむ社会保障費の財源確
保にあります。増税を先送りするなら、その分、社会保障費を削減する必要がありま
す。


 そこで興味深いのが今後の政治日程です。最近、番組内でもコメントしましたが、
仮に安倍総理が消費増税延期を争点にして、衆参同日ダブル選挙に持ち込み、与党が
安定政権を獲得したとします。そうすると、次の国政選挙は2019年夏の参院選まであ
りません。つまり、選挙を意識せずに政策を立案できる環境が3年も続くのです。


 これまでは選挙が近づくたびに、バラマキ型の政策が浮上し、医療費の削減といっ
たシニアに不人気な政策課題は先送りされてきました。しかし、選挙を意識しないで
じっくりと日本の構造問題にメスを入れることができる時間が生まれるのです。この
機会を逃す手はありません。


 消費増税の延期と引き換えに、今度こそ政権与党に本気で歳出削減に取り組んでも
らう。ちょっと気が早いですが、私はこのシナリオに賭けるしか、日本の活路はない
ような気がしています。もちろん、今の政権与党にそれだけの覚悟があると仮定して
の話ですが。


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