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ニュース報道の心

2016年3月11日(金)マラドーナ症候群? 豊嶋広

 「日経プラス10」のニュース解説の中で、日経電子版の記事を積極的に取り上げて
います。「東京の倒産件数増 アパレル不振と変調のシグナル」、「武道館に8000人
集めたラジオ番組『あ、安部礼司』」、「英中銀総裁もEU離脱問題を語れ(フィナ
ンシャル・タイムズ社説)」といったように、経済ニュースの独自分析や、社会現象、
海外論調まで対象は様々です。


 3月7日の放送で「『マラドーナ症候群』の反復か、終止符か?」という記事を選び
ました。見出しだけみると判じ物のようです。アルゼンチンの国民的英雄、サッカー
のマラドーナさんは大衆迎合的なポピュリズムの代表的政治家といわれるベネズエラ
のチャベス前大統領やキューバのカストロ前議長と親交が深かったことでも知られて
います。あるコラムニストがポピュリズムの代名詞として「マラドーナ症候群」とい
う言葉を造りました。


 この記事で焦点が当てられたのは就任3カ月のアルゼンチンのマクリ現大統領。懸
案の債務返済で、債権者のファンドと合意するなど市場原理に沿った改革を進めて
いますが、裏付けとなる国内合意のメドが立っていない。つまり「前政権の否定」
という一種のポピュリズムではないか、という論調が出ている、という話です。


 19世紀初頭にスペインから独立し、20世紀初頭にかけて先進国の一角に数えられて
いたアルゼンチン。その後は独裁や軍政の時期もあり、経済混乱が続いています。
長年の呪縛を乗り越えるには、かなりの政治パワーが必要なのでしょう。


 ポピュリズムは、もはや国境を超えた潮流となっています。米大統領選の候補指名
争いで、共和党で首位を走るトランプ氏は移民制限など過激な発言で人気を集めてい
ます。フランスや英国で移民に対して厳しい政策を掲げる政党が躍進していることも、
同じような文脈でとらえることができるでしょう。改革には抵抗があるが、それを乗
り越えずに未来を描けるのか。各国の政治に突きつけられた課題といえます。


 ノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツは「世界には先進国、発展途上
国、アルゼンチンと日本の4つに分類できる」と評したといいます。先進国から転落
したアルゼンチンと、明治以降に先進国入りした日本は世界の中でも例外的な存在、
という指摘です。アルゼンチンには先進国への復帰の道筋を描いていただきたい、
と思います。一方で、先進国クラブから転落し"クズネッツ理論"を書き換える国が
出てくることは果たしてないのか、と考えます。


 私にはサッカーを語る資格は全くありませんが、マラドーナ選手のプレーを一度、
見たことがあります。1979年、ワールドユースサッカーのメンバーで来日し、「大
宮アルディージャ」の本拠地の前身である県営大宮公園サッカー場が舞台でした。
当時、私が通っていた高校の校長がサッカー界でそれなりに力を持っており、「生
徒たちにマラドーナのプレーを見せたい」という思いから実現したと記憶しています。
35年ほど経過し、このような形でマラドーナさんに触れることになるとは、想像もし
ていませんでしたが。

 (日本経済新聞社編集局キャスター長兼経済部シニア・エディター) 


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