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ニュース報道の心

2016年1月29日(金)外国人向けの歌舞伎 大ブレークの予感 木村恭子

 1月18日に松竹の記者会見に出席しました。同日夜のニュースプラスでも、この模
様を取り上げましたが、内容は、人気歌舞伎俳優の市川染五郎さんが、米ラスベガス
で5月に歌舞伎を、しかも、海外公演としては初めて古典ではなくまったく新しい作
品を披露する--というものでした。


 歌舞伎の海外公演の歴史は古く、最初の公演地は1928年のモスクワだったそうです。
そういえば、英オックスフォード英語辞典に「Kabuki」(「bu」にアクセント)が収
録されたのも1899年と、かなり前のことでした。


 今回、歌舞伎初心者の外国人も楽しめるように新たな試みに挑戦することについて、
演出も手がける染五郎さんは会見で「劇場内に水を持ち込み、火も使う。宙乗りや早
変わりも考えており、現地の方にびっくりしていただきたい」と語っていました。


 私自身はそのとき、すでに"びっくり"してしまっていました。英語での逐語通訳
がついていたことに!通常、外国人記者が出席可能な会見であっても、日本語だけで
やり取りする風景ばかりで、通訳付きの会見は国際会議など特別な場面でしかお目に
かかったことがなかっただけに、「日本での記者会見のグローバル化」に内心、驚い
ていたのでした。


 松竹は、これを機に世界各地で歌舞伎の公演を本格化するそうで、同時に、国内で
もラスベガス公演のような「外国人向け」の新作をレジャー施設などで公演し、訪日
外国人観光客を歌舞伎に呼び込みたい考えです。


 「ファンが無限に増えるポテンシャルはある」と語る松竹の迫本淳一社長の発言を
受け、私は「外国人向けの歌舞伎が大ブレークするかもしれない」との予感がしまし
た。記者会見の数日前に読んだ英BBCの記事を思い出しながら--。


 1月10日に亡くなった英国のロック歌手、デビッド・ボウイさんについて報じた
BBCは12日のWebの記事のなかで、「有名な親日家」のボウイさんと歌舞伎との関
係の深さをいくつか紹介していました。


 ボウイさんは、有名な歌舞伎の女形、坂東玉三郎さんから、歌舞伎の化粧法につい
て学んだことがあり、彼のトレードマークとなった稲妻のような顔のメーキャップは
歌舞伎の隈取の影響を受けていたそうです。また、ボウイさんは歌舞伎の早変わりの
技術をステージに取り入れた「最初の西洋のアーティスト」とのこと。ボウイさんが
歌舞伎(Kabuki)に魅せられた理由については「性を超越した両性具有性にヒントを
得たのだと思う」とのファッション史家のコメントが載っていました。


 実は日本経済新聞社が発行する英字媒体『Nikkei Asian Review』を編集している
部署の外国人コピー・エディター(英語のリライトや見出しを担当)の中にもKabukiの
熱烈なファンがいます。私よりもずっと歌舞伎にくわしいメンデルスゾーンさんは、
外国人からみたKabukiの魅力に関して、こんなヒントをくれました。松竹が昨年企画した
人気漫画「ワンピース」とコラボした歌舞伎は「伝統芸と組み合わせた試みは
ナイスだった」として、「今後は『ルパン3世』や『キャプテン翼』といった人気漫画を
歌舞伎の題材にしたら外国人に受けると思う」。


 松竹もワンピース歌舞伎が大好評だったことから、収益回復への起爆剤にしたいと
目論んでいるだけに、松竹による今後の歌舞伎の世界戦略が楽しみになってきます。


 いまや訪日外国人客数は2020年までの政府目標である2000万人を前倒しで達成する
勢いをみせています。日本文化を世界へ発信する政府の「クールジャパン」戦略も進
むなか、外国人に日本の文化や芸術を「安心してください、わかりますよ!」と言え
るように(しかも英語で)しておきたいものですね。


 すでに微妙な鮮度のオチで失礼いたしましたm(_ _)m


(日本経済新聞社編集局 編集委員兼政治部シニア・エディター兼キャスター)


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