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ニュース報道の心

2016年1月22日(金)世界同時株安 先が見えない「混沌」 山川龍雄

 読者の皆様、今回は少し言葉遊びに付き合ってください。


 年初から続く世界同時株安。私は原因が大きく4つあると思っています。中国経済の
減速(China)、米国の利上げ(America)、原油価格の下落(Oil)、サウジアラビア
の動乱(Saudi Arabia)です。そして、この4つの頭文字をとると、Chaos(=カオス)、
つまり「混沌」となります。今年のマーケットを占ううえで、このカオスの動向から
目が離せません。


 1つずつ見ていきましょう。まずは中国。かつて、これほど中国の市場の動向に日本
が右往左往する事態があったでしょうか。人民元の売買の基準となる為替レート「基
準値(中間値)」が発表されるのが、日本時間の午前10時15分。上海株式市場が開く
のが10時30分。この「魔の時間帯」に日本市場では、毎日のように為替や株価が大き
く動いています。


 先日、発表された中国の2015年の国内総生産(GDP)は前年比6.9%増と、四半世紀
ぶりの低い伸びでした。そもそもGDPの数字自体が信頼性に乏しく、それが不透明感
に輪をかけています。個人的には、相手国のある関係で「操作しづらい」と思われる
貿易統計などで底入れのシグナルが出ることが、反転の材料になるのではないかと予
想しています。


 2つめが、米国の金融政策。昨年末の米連邦準備理事会(FRB)による9年半ぶりの
利上げは、いったんは成功に終わったかのように見えました。しかし、年初来の世界
同時株安の動きを見ると、やはり緩和マネーが逆回転する引きがねを引いてしまった
ように思えます。


 そして市場関係者は、ここへきて、もう1つのリスクを意識し始めました。頼みの
綱である米国経済の変調です。1月19日に番組に登場していただいたJPモルガン・
チェース銀行の佐々木融マネジングディレクターは「今、投資家の間では、2016年に
アメリカで景気後退が起きるのではないかという懸念が浮上している。アメリカの利
上げは、早すぎたというよりも、むしろ景気後退期に実施したということで、遅すぎ
たのではないか」と指摘しました。


 3つめは、原油価格の下落です。ニューヨーク原油の先物相場は、1バレル=30ドル
を割り込み、12年ぶりの安値をつけています。需給両面から、価格が上昇する材料は
ほとんど見当たりません。1月20日に番組に登場していただいた世界平和研究所の藤
和彦・主任研究員は「1バレル=20ドルまで下がるのは時間の問題。そうなると、
シェールオイル企業の破たんも懸念される。それが引き金となって、春頃には10ドル
台、そして10ドルを割り込む可能性すらある」と予想します。


 そして4つめの震源地が、新たな地政学リスクとして浮上したサウジアラビア。現在、
国防や経済政策の実権を握るのは、サルマン国王の寵愛を受けた30歳の息子、ムハン
マド副皇太子です。この人物は対外強硬路線で知られ、昨年3月から続くイエメンへの
軍事介入を主導する一方で、経済面では、原油の生産調整に応じる姿勢を見せません。
膨らむ軍費と原油価格の急落でサウジの財政は悪化の一途をたどっており、公共料金
の値上げなどで、国民の反発が強まっています。政府はデモやクーデターといった内
乱を恐れ、批判勢力の徹底した弾圧に乗り出しました。その延長線上にシーア派の指
導者ニムル師の処刑があります。それが、イランとの国交断絶にまで発展してしたの
です。この先の中東情勢や原油相場を占ううえで、サウジの動きを注視する必要があ
ります。


 中国経済、米国の金融政策、原油価格の下落、サウジの動乱と、いずれも海外の出
来事です。日本にこれといった原因が見当たらないのに、円高が急速に進み、日本株
が叩き売られているところが、今回のつらいところ。だからこそ、なおさら、先行き
が見えないChaos(混沌)の状況にあると言えます。


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