2016年が始まりました。仕事始めの1月4日が月曜日で、「いきなり本番」と気合い
を入れて職場へ向かった方も多いと思います。もっとも年明けからショッキングな
ニュースが続き、改めて目を覚まされる展開になりました。
私にとっても今年最初の番組となった4日。サウジアラビアのイランとの外交関係
断絶をトップニュースで取り上げました。サウジが2日に実施した死刑執行をきっか
けに、在テヘランのサウジ大使館襲撃、そして断交へと事態は急展開しました。
日ごろ中東情勢に事細かく接しているわけではない私ですが、疑問に思った点が一
つありました。シーア派の宗教指導者ニムル師の処刑は、サウジとシーア派大国・イ
ランとの対立が決定的になるのは明らか。それをなぜ、実行に移したのか。
中東の駐在経験も長い日本経済新聞の松尾博文編集委員が、その背景を昨年12月に
書いていました。日経の英文媒体「NIKKEI ASIAN REVIEW」Web版にも掲載されていま
す。対外政策でかつては穏健だったサウジが強硬姿勢をとるようになった一因として、
王政の世代交代がある、というのです。
現在のサルマン国王が即位したのが昨年1月。息子であり、サウジ王室にとっては
第3世代に当たるムハンマド・ビン・サルマン氏が昨春に副皇太子に就き、権力の集
中を進めました。そして、アラブ世界における影響力拡大を志向するようになった、
というのです。原油価格の急落で、富裕国のサウジも財政赤字に転落。ばらまき的な
財政政策は引き締めざるを得なくなり、対外強硬姿勢は「不満を強めている国民の目
を外にそらす意図もある」との指摘もあります。
イランが核問題で米欧などと合意に達し、経済制裁の解除が近づいてきました。原
油輸出解禁に伴う油価の押し下げは無視できません。昨年10月に公表された国際通貨
基金(IMF)の報告書は、どの程度影響あるかは「極めて不透明」としながら、油
価を中期的に5~10%押し下げる可能性を指摘しています。中東の大国として競って
きたイランの復権に反発してきたサウジにとって、経済的にも打撃はあると言えるで
しょう。もちろん、それが地域の緊張を高めてよい理由にはなりません。
2回目の出演日の6日。北朝鮮が初の「水爆実験」を成功させたと発表しました。日
経の特派員としてソウルや北京に駐在した伊集院敦・日本経済研究センター国際アジ
ア研究部長がじっくり解説してくれました。私が印象に残ったのは「4回目の核実験
ということで、何となく慣れてきている。ただ、潜在的なリスクは拡大している」と
の指摘でした。
今年の世界経済は今のところ3%台の成長が見込まれています。これをメーンシナ
リオとしても、下押ししかねないリスクが、例年より数多いと感じます。マーケット
は「予測できないものを嫌う」とはよく言われることですが、企業の行動にも同じこ
とが当てはまるでしょう。例えば投資のアクセルを踏んだときに、前提条件が変わっ
たとしたら。
リスクが現実になるとき――。少なからず身構える年明けとなりました。
(日本経済新聞社編集局キャスター長兼経済部シニア・エディター)
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