最近、インターネット上で使える「グーグル翻訳」の日本語と英語間の精度が上がっていると感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。日本語と英語は、文法も語彙も類似性や関連性がないために、翻訳は「超困難」レベルといわれています。逆に「超簡易」なのは、日本語と韓国語間やスペイン語とポルトガル語間だそうです。
日英間はもともと翻訳が難しいために、機械による自動翻訳の歴史はすでに60年も経っているにもかかわらず、これまで「とんでも翻訳」が多かったのですが、ここにきて、「使えるレベル」になってきました。その立役者は、AI(人工知能)の最新技術「ディープラーニング(深層学習)」。世界トップ棋士を破った「アルファ碁」で一気に注目を浴びた、あの技術です。
従来の自動翻訳は、文章を単語ごとに分割した上で個別に訳す方法を取っていましたが、グーグルが2016年11月に適用した技術は、文単位で文章全体の流れをAIに学習させる方法です。これは、人間の脳の働きを模したニューラルネットワーク(神経回路網)を活用しているので、人間が言葉を覚えるようにAIが言語を学習していくなかで、より自然でスムーズな翻訳へとつながっているといえましょう。
「学習」となると、人間よりもAIのほうが断然、得意分野といえます。人間は「気分が乗らない」「疲れている」といった理由で、ついついさぼったり効率が上がらない場合もありますが、AIでは、そんなことは一切ありえません。
「なら、つらい英語の勉強から解放される日が近いかも」といった期待も高まります。実際、日本人が苦手とする英会話を自動翻訳できるアプリも実験段階ではありますが利用可能になっています。
情報通信研究機構(NICT)が開発した多言語翻訳アプリ「ボイストラ」(VoiceTra)は、スマートフォン(スマホ)で誰でも無料でインストールすることができます。私も昨年、NICTに取材して、このアプリを知り活用中です。
実際に使って気付いたのは、自分が思いつかないような言い回しや、知らなかった単語が翻訳機で表示されることもあり、それで逆に学ぶことができるという点です。
AIによる明るい未来に目が向く一方で、「人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる」といった刺激的なリポートが色々と発表されています。知り合いの翻訳者からは「私たちの仕事は、将来、なくなってしまうのか」といった不安な声も聞かれます。
AIが発展した将来のプラスとマイナスの両面について考えていた年明けに、興味深いテレビ番組を見ました。別番組で恐縮ですが、1月7日の「日経FTサタデー9」(BSジャパン)で「AIが描く2030年の世界」について特集していました。
AIにくわしい学者や企業人、日経新聞の編集委員らが「2030年の未来予測」をしたところ、「ロボット税の導入」や「データによる富の再分配」といった社会変化に加え、「絶食系男子の増加」を挙げたゲストもいて、テレビを観ながら苦笑。男性は「草食系」を超えて「絶食系」となるそうです。少子化の加速が心配です。
さて、私たち記者の仕事がどうなるのかも心配なところですが、そんな不確実性の高い未来を見据えながら、次から次に起きるニュースを、今年も深く・広く・多角的にお伝えしていきたいと思います。
今年もよろしくお願い致します。
日本経済新聞
編集委員兼政治部シニア・エディター兼キャスター
木村恭子
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