1月13日の番組中、日立製作所が進める事業売却を樹木の剪定に例えた私のコメントに反響がありました。今日は改めてその話をします。
このところ、日立の「選択と集中」が加速しています。元をたどれば、同社のリストラは、2009年3月期に過去最大の赤字を計上したところから始まります。この時、急きょ会長兼社長に就いた川村隆氏が総合電機路線から決別し、インフラや情報通信に経営資源を集中させる方針を掲げました。
その後、順調に業績を回復させた日立ですが、今でも事業売却の手は緩めていません。先日は、子会社で東証1部上場企業である日立工機の全保有株式を米投資会社に売却すると発表しました。
そればかりではありません。2016年には、日立物流の保有株のうち、約半分をSGホールディングスに、日立キャピタルの保有株の約半分を三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に放出しました。
いずれも赤字で行き詰まっていたわけではありません。それでも、ノンコア(非中核)とみなした事業は大胆に切り離しています。
日立と言えば、「このー木なんの木、気になる木」というフレーズでお馴染みのハワイ・オアフ島にある大樹が有名です。樹木は時々、混み合っている枝を切って間引かないと、しっかりと育ちません。本当に育てたい幹や枝に水や栄養、太陽光が行き渡らないからです。風通しが悪くなって、病気になることもあります。
企業経営も同じです。どの事業は残し、どの事業は間引くのか、決断しなければなりません。それが「選択と集中」です。そうしなければ、中核事業に十分なヒト、モノ、カネが行き渡らず、成長が止まってしまいます。組織の風通しが悪くなって、大企業病にかかることもあります。
もともと日立が、このテレビCMを流し始めたのは1973年。大樹の映像をバックに、グループ各社の名前を表示させたこともからも分かる通り、日立グループの総合力や事業の幅広さを訴求する狙いがありました。ただ、時代は変わったのです。やみ雲に事業領域を広げることが会社を強くすることにはつながりません。混みあっている枝を定期的に間引いてこそ、会社はバランスよく成長していくのです。
かといって、短期間に枝を間引き過ぎると、今度は葉がなくなり、光合成ができずに枯れてしまいます。ある程度、事業の多様性を保ちつつ、ノンコアとみなした事業を放出していく。その継続的な営みが、重要なのでしょう。
そこに気づいた経営陣が剪定を続けるようになって以降、日立は成長軌道を取り戻しました。その意味では、企業経営者は、優れた植木屋でなくてはならないのかもしれません。
日経プラス10キャスター
山川龍雄
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