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ニュース報道の心

2016年4月22日(金)故郷の被災で願う「災害弱者」への配慮 山川龍雄

 まさか自分の故郷である熊本県が被災地になるとは思いませんでした。これまで何
気なく阪神・淡路大震災や東日本大震災といった呼び名を使っていましたが、「熊本
地震」と言われると、複雑な気持ちになります。県民の誇りである熊本城が損壊した
映像を見ると、「これ以上は崩れないでほしい。踏みとどまってくれ」と祈りたい心
境になります。


 偶然にも、4月15日金曜日は特番のロケで福岡県に出張が入っており、仕事を終え
た足で実家に向かいました。私の故郷は熊本県の北部、荒尾市なので、震源地とは離
れています。それでも、その後「本震」と判断されることになった16日未明の揺れ
は、未体験の激しさでした。その夜は、明け方まで余震が繰り返され、一睡もできま
せんでした。年老いた両親の傍にいることができたのは、幸いでした。


 今回の震災で心配なのは、被災者の精神的ストレスです。実家にいても、とにかく
余震の多さが半端ではありませんでした。夜中にウトウトしていると、「緊急地震速
報です」という携帯電話からのメッセージが鳴り響き、ビクッとします。そして、ほ
ぼ同時に揺れが起きます。これが夜通し繰り返されたため、気が滅入りました。正
直、電源を切ろうかと思いましたが、それは怖くて、できません。震源地に近い被災
者の方々はもちろんのこと、その周辺でも、今回は地震速報の音がトラウマになった
人が多いのではないかと推測します。


 今回の震災でも、スマートフォンやインターネットといった情報技術が活躍してい
ます。SNSを通じて、全国から支援物資が寄せられています。災害の度に、物資の偏
在が課題になりますが、被災者がフェイスブックなどに「この場所には一切届いてい
ません」「水、オムツ、生理用品が不足しています」などと書き込むことによって、
従来の災害よりも偏在が解消されるまでの時間が短縮しているように見えます。


九州は今、断層によって、南北が分断されています。これから徐々に復旧していく
と思いますが、鉄道や幹線道路が所々通じていません。現地の人たちは「この道路は
片側一車線だけど、通行できた」といった情報を発信することで刻々と変化する道路
状況を共有しています。トヨタ自動車とホンダは地震発生後の道路の通行実績を地図
で示し、インターネット上で公開しました。


全体として、災害時におけるSNSの活用方法が、以前よりもこなれてきた印象を受
けます。ただ、こうした情報技術が、被災者を傷つけている側面もあることは気に留
めておかなければならないでしょう。地震後、「大型スーパーが火事だ」「動物園か
らライオンが逃げ出した」といったデマが広がりました。心無い投稿も目につきま
す。高齢者を狙った詐欺事件も発生しています。


 災害時においては、情報技術を使いこなせる者と使いこなせない者の間の格差が一
層浮き彫りになります。避難所にいる高齢者は、現役世代が器用にスマホを使いこな
して情報交換している姿を目にして、孤立感を深めているかもしれません。阿蘇の麓
を震源地とした今回の地震は、たくさんの災害弱者、情報弱者を生んでいると思われ
ます。熊本県に両親を残しているせいでしょうか。いつも以上に、高齢者に配慮した
復旧・復興であってほしいと切に願っています。


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