「来年のことを言えば鬼が笑う」と言われますが、それも許される季節になってき
た気がします。夏場の中国の株価急落、先月起きたフランスの同時テロと記憶に生々
しいことが多い2015年ですが、ことマーケットについては悪い年でないまま、終わり
そうです。
外国為替市場のドル円相場は12月1日の東京市場終値が1ドル=122円86銭。119円台
半ばより円高に行かなければ、4年連続の上昇(円安)になります。JPモルガン・
チェースによると、4年連続上昇は1973年に円が変動相場制に移ってから初めてです。
番組でも何回か触れていますが、日本からの輸出は中国景気減速の影響などもあって
さえません。原油価格の下落で一時ほどではありませんが、輸入は東日本大震災以前
と比べれば膨らんだままで、貿易収支は赤字の月が多い。貿易取引に絡んでいえば、
ドルを買って円を売る方が多く、円安の構造が続いています。
もっとも昨秋を最後に日銀は追加緩和をせず、円安にも歯止めがかかっています。
今年のドル円相場の高値と安値の差は10円ほどで、変動相場制移行後、最小となりそ
うです。
株式市場の日経平均株価は、今年で4年連続上昇がほぼ確実になってきました。4年
連続高は2003~06年以来です。前回03年はりそな銀行の一時国有化があり、日本の不
良債権問題が最終処理に入った時期です。現在は為替の円安傾向に加え、最高益が見
込まれている企業業績が支えになっている、と言っていいでしょう。
両者の共通点は何か。スタートがいずれもアベノミクス相場が始まった年です。で
は来年はどうなるのか。前提となる世界経済は、国際通貨基金(IMF)が見込んで
いる3.6%成長、といった辺りがメーンシナリオと言えます。先進国中心に、今年よ
りも成長率は少し上向くイメージです。
リスクシナリオを挙げれば切りがありませんが、3日の放送でも取り上げた欧州中
央銀行(ECB)の追加金融緩和は、波乱の芽になるかもしれません。銀行が余剰資
金を中央銀行に預ける際の金利を、ECBは昨年6月に初めてマイナスとし、今回、
これをマイナス0.3%まで下げました。中央銀行を「貸し金庫」に例えれば、お金を
預けるたびに手数料を払うことになるため、銀行により多くのお金を融資に使わせる
効果も狙っています。ECBを皮切りに、他の欧州の中銀もマイナス金利を始めまし
た。国債の大量購入を続けている日銀は、マイナス金利導入を否定していますが、追
加緩和の必要性が高まってきたときにこうした潮流に背を向け続けることができるか
どうか。9年半ぶりの実施が見込まれる米の利上げを横目にしながら、「マイナスの
金利」の世界が広がることになると、マーケットも頭を悩ましそうです。
日本の経済は足踏み感が強まっています。11月27日の放送で紹介した「政府からも
完全雇用に近いという発言が出ている」という話は、加藤勝信・一億総活躍担当相の
日本記者クラブでの会見から引用しました。「人手不足がボトルネックにも」といっ
た認識も示していますが、賃金の上昇は鈍く、消費に火が付かない状況から果たして
脱却できるかどうか。
米大統領選や日本の参院選挙など、2016年は政治の年でもあります。アベノミクス
の神通力が試されそうです。
(日本経済新聞社編集局キャスター長兼経済部シニア・エディター)
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