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ニュース報道の心

2015年11月6日(金)バブルは形を変えてやって来る 豊嶋広

10年ほど前にあるメガバンク首脳(当時)にインタビューした際、金融機関の経営
で留意する点として述べた一言が今でも記憶に残っています。「バブルは形を変えて
やって来る」。言外には「だからまたバブルを生み出してしまう」という自戒が込め
られています。経済書としては広く読まれた「This Time Is Different」(「今回は
違う」、翻訳本の題名は「国家は破綻する」)は歴史を遡って膨大なデータを分析し
ていますが、経営者の感覚としてもあまり遠くないものがあるのだと思います。


 米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を決める10月の会合で「12月に利上げの是非
を検討する」ことを表明しました。中国発の世界的な株式市場混乱がひとまず落ち着
き、ゼロ金利の長期化を終わらせる布石を打ってきました。1つには、バブルが気が
かりなのでしょう。


 今回のバブルはどこにあるのでしょうか。新興国企業のドル建て債務は日本円換算
で300兆円以上、米国の投資適格以下の社債・ローン残高は200兆円以上と言われます。
リーマン・ショックの発火点になったサブプライムローン(信用力の低い個人向けの
住宅融資)残高が当時、100兆円だったのを考えると、火種はありそうです。


 伝説の一角獣「ユニコーン」。米国の資本市場で、企業価値が10億ドル(約1200億
円)以上に達した未上場の大型ベンチャーのことを呼びます。珍しいはずなのに、そ
の数は100を超えました。株式を公開しなくても潤沢な資金が調達できるのは、カネ
余りの一断面と言えます。


 タクシー配車のウーバーテクノロジーズ、空き部屋を仲介するエアビーアンドビー。
画期的なサービスを提供するベンチャーが代表格です。11月3日付の日本経済新聞朝刊
に、著名投資家であるディクソン・ドール氏の興味深いインタビューが載っていまし
た。ユニコーンについて「泡っぽい(frothy)がバブルではない」という現状認識で
す。2005年にFRBのグリーンスパン議長(当時)が住宅市場を評したのが同じ表現で
した。振り返ると、その後の住宅市場はバブル化しましたが、今回はどうなるので
しょう。


 米国でいま注目を集めているユニコーンが、血液検査ベンチャーのセラノスです。
11月2日の放送で取り上げた映像は、ビル・クリントン元大統領が開いた今年9月のシ
ンポジウムで、中国アリババ集団のジャック・マー会長の隣で議論に参加しているの
がセラノスのエリザベス・ホームズCEOです。注目度が非常に高い期待の星であるこ
とが分かります。


 この若手女性経営者に疑惑が浮上しました。数滴の血液でがんやコレステロールな
どの検査を素早くできる、という点が「誇張ではないか」という報道が相次いでいる
のです。セラノスは否定していますが、真相はこれからのようです。


 ユニコーンは未公開企業ゆえ、上場企業より情報公開や企業統治のルールは厳しく
ありません。このこと自体にリスクは内包されている、と言っていいでしょう。ホー
ムズさんが降りかかった疑惑を払拭することが第一ですが、もしできなかったとすれ
ば。博士号を最近取り消された日本の女性研究者のことをふと思い出しました。

       (日本経済新聞社編集局キャスター長兼経済部シニア・エディター)


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