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ニュース報道の心

2015年11月13日(金)「ちょっと違うな」を大切に 木村恭子

 今回は、鈴木亮編集委員の代打で担当します。鈴木編集委員の前回(10月9日)の
コラムにありますように、ニュースプラスのコーナーの担当者も積極的に現場に出て、
映像を交えながら、より具体的に、わかりやすくニュースをお伝えしようと東奔西走
しています(ちょっと大げさですが)。私の"現場デビュー"は、10月8日に都内で開
かれた、カジュアル衣料店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの2015年
8月期の決算説明会でした。


流通業に詳しい田中陽編集委員による当日夜のニュースプラスでの解説のポイント
は、ユニクロのインターネット通販戦略。柳井正会長兼社長がネット通販の売上高比
率を現在の5%程度から30~50%に引き上げるという数値目標を初めて明らかにした
点を簡潔に掘り下げました。


 私が気になったのは米国での苦戦です。海外ユニクロ事業は前期比45.9%増の6036
億円と好調なのですが、これは中国や台湾、東アジアといったアジア圏の寄与が大き
く、米国については店舗数を増やしたものの、売り上げの未達が続き在庫処分を進め
た結果、計画を下回り赤字幅が拡大したそうです。


 店舗数の地域差も歴然です。グレーターチャイナと呼ぶ中国、香港、台湾の8月末
時点のユニクロの店舗数は467。東南アジアは102店舗。一方、米国は42店舗とのこと。
私は心の中で「店舗数の差も大きいよね。米国は国土が広いから広告などでブランド
力を高めて、あとは田中編集委員の解説にあったようにネット通販のほうが効率いい
のでは」などとつぶやいていました。


 ところが、数日後、ニューヨーク出張から帰国した外資系金融機関の友人の話を聞
いたところ、「ユニクロのロゴの入った袋を持ったニューヨーカーを結構見かけまし
たよ」とのこと。


What?「米国って、全然ダメなんじゃないの」と思い込んでいた私は頭の中に疑問
符が。柳井会長が「米国市場を最優先」「世界中から精鋭を送り込んで改善させる」
と語っていただけに、すでに建て直しの効果の兆しが出つつあるのかも--と、ハッ
としました。


 さらにその数日後の10月24日、日経新聞夕刊の『著名デザイナー×量販店 個性で
真剣勝負 値段は抑える』という記事が目に止まりました。


 有名デザイナーとファストファッションや日本の百貨店とのコラボレーション(協
業)が紹介されていて、ユニクロは今秋、エルメスの元デザイナーが手掛ける商品を
展開しているとのこと。ファッション業界に精通する企業報道部の松本和佳次長が
「高くて諦めていたデザイナーやブランドの商品に手が届きやすくなる」と書いてい
るように、日ごろエルメスの商品は買えなくてもコラボ商品なら--と、即ユニクロ
のネット通販サイトをのぞいてみたところ--。


 商品の多くに「完売しました」の表示が出ているではないですか!確か、国内では
ユニクロの商品が値上げしたことで客が離れ、さらに客単価も落ちているというのが
「通説」だったはず。1万円前後の商品も多かったにも関わらず完売続出とは!


Why?デフレ脱却の兆しなのか。個人消費がやっと上向きつつあるのか。はたまた、
日本銀行の政策に何らかの影響を及ぼすのか。しばしパソコンの前でフリーズしなが
ら考えを巡らしたのでした。


 何を申し上げたいかといいますと、皆さんが実際に生活しながら感じていることと、
メディアが報じている内容とが「ちょっと違うな」と思われる場面があるかもしれま
せん。


 そんなときに「どう解釈すればいいのか」といった視点を番組で提供できるように
努力していきたい――という私なりの所信表明でございました。


最後になりますが、4月から初めてテレビで「話す」仕事をしています。なにぶん
「書く」ことをなりわいとしてきたことから、お聞き苦しい点も多いかと存じます。
この場を借りてお詫び申し上げます。


引き続き"生温かく"見守っていただけましたら幸いです。

(日本経済新聞社編集局 編集委員兼政治部シニア・エディター兼キャスター)


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