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ニュース報道の心

2015年8月28日(金)株安世界を覆う晴れぬ霧 山川龍雄

 8月24日月曜日は番組中に騒然となりました。マーケットアナリストの豊島逸夫
(としま・いつお)さんをお迎えして、世界同時株安の行方について話をうかがって
いたのですが、その間に、円ドルレートや米国株式市場が激しく動き、私も含めて出
演者が、モニターに映し出されるマーケット情報に釘付けになりました。豊島さんも
出演後、ツイッターで「色々やってきたけど、番組出演中に、円が5円動くなんて初め
て!」とつぶやいていました。


 今回の世界同時株安。震源地が中国というのが、得体のしれない不透明感を漂わせ
る原因となっています。なぜ、中国だと不気味なのか。1つは、中国の経済指標があ
てにならないからでしょう。中国の2015年4~6月期の実質GDP(国内総生産)は前年
同期比7.0%の伸びとなりましたが、もはやこの数字を信じている人は少数派です。


 かつて、李克強首相が「GDPはあてにできない。電力消費量、鉄道輸送量、銀行融
資の3つの指標を参考にしている」と発言したのがきっかけで、この3つを組み合わせ
たものを李克強指数と呼ぶようになりました。この指数は年初から悪化しており、
7%成長とのかい離が目立ちます。企業経営もそうですが、問題を解決するには、正
確な実態把握が前提となります。しかし、中国の場合、どの程度、経済が悪いのか、
外部からは見えません。それが世界の投資家を不安にさせています。


 外部から把握できない以上、中国政府の対応に期待するしかないのですが、その信
認がぐらついています。そもそも中国経済の減速は2011年頃から指摘されており、今
に始まったことではありません。それでもマーケットが動揺しなかったのは、「最後
は中国政府が何とかしてくれる」という期待があったからです。ところが、上海株下
落に対するなりふり構わぬ対策が空振りに終わったことなどから、政府が市場を制御
できなくなっているのではないか、という疑念が浮上しています。国家資本主義の名
のもと、これまで何でも政府がコントロールしてきたのが中国です。しかし、中国共
産党も市場は思うに任せない。中国は「市場対国家」の戦いに負けつつあるのではな
いか。そんな見方が今回のマーケットの変調の根底にあるような気がします。


 では、どうすれば、経済の低迷に歯止めがかかるのか。人民元を大幅に切り下げて
輸出競争力を回復させるか、大規模な財政出動を伴う経済対策を打つか。思い浮かぶ
のは、この2つです。ところが、そこに大胆に踏み切れないジレンマを中国政府は抱
えています。人民元の切り下げは、外国への資産逃避を促しますし、ドル建て社債を
発行している中国企業の経営を圧迫します。それに9月下旬に米中首脳会談を控えて
いるなかで、通貨安競争を仕掛けているように見られる行為は政治的にも慎まざるを
得ないでしょう。結果、人民元の切り下げは現状、中途半端なものにとどまっていま
す。


 では、財政出動による経済対策はどうか。そもそもリーマンショック後の世界経済
の低迷を救ったのは、日本円にして50兆円を超える規模の経済対策を打った中国でし
た。しかし、その時の反動で、不動産バブルや生産設備の過剰、格差の拡大といった
問題を抱えてしまいました。だからこそ、投資から消費主体の経済への転換に取り組
んでいるのが今の中国です。ここで公共投資のバラマキに踏み切れば、構造改革は頓
挫し、バブルの芽をさらに膨らませます。


 8月26日にゲストとしてお越しいただいた国際金融評論家の倉都康行(くらつ・や
すゆき)さんは、「今回は震源地が中国。仮に先進国だけで協調して対策を打って
も、どの程度、効き目があるのかが見通せない」と指摘します。今、世界経済を覆っ
ているものが霧だとすれば、時間が経てば、晴れるでしょう。しかし、漂っているの
は、(まさに中国を悩ませている)PM2.5のような、より複雑でやっかいなものかも
しれません。仮に目先の株価が回復したとしても、心の底から爽快になれない。今回
のマーケットの変調にはそんな重苦しさを感じます。


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