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ニュース報道の心

2015年8月7日(金)SO FAR SO GOOD ? 豊嶋広

 原油価格をはじめ、世界的に商品価格の下落が目立っています。世界第2位の経済
大国になった中国の需要落ち込みがその一因、と指摘されています。世界経済は大丈
夫なのでしょうか。


 第2位の調子が悪ければ、普段以上に第1位の米国経済の動向に関心が集まります。
国際通貨基金(IMF)が7月に出した見通しによると、米国の今年の実質経済成長率は
下方修正された後でも2.5%と、世界経済を引っ張る役割が期待されています。


 日本もそうした事情をよくみながら、経済政策を考える必要があるのでしょう。あ
る関係者は「米国は心配ないと思うが、それ以外に世界経済を引っ張る役回りが見え
ないのがリスク」と話していました。


 その米国の景気実態は、強弱の数字が入り交じった状態が続いています。強い方で
は失業率が5%台前半まで下がり、「これ以上下がらない水準」である完全雇用に近
いと言われます。新車販売は年間で1700万台を突破する勢いで歴史的な高水準。前回
のバブル崩壊の震源地となった住宅についても、直近の中古住宅販売が年率換算で約
550万戸とリーマン危機前以来の水準です。


 それなのに、経済の体温を表す物価がなかなか上がらない。食品やエネルギーを除
いた消費者物価の前年比上昇率は、2%にも達しません。少しマイナーな統計ですが
7月31日に発表された4~6月の雇用コスト指数(ECI)は、前の四半期と比べた上昇率
が0.2%と急ブレーキがかかりました。米国は国民皆保険ではないので医療保険料を
会社が提供するかどうかは仕事を決める大きな要素になるのですが、ECIは賃金に加
えて福利厚生費などを含む従業員への「トータルコスト」です。これまで順調に上昇
してきた統計までが腰折れする結果を見せられると、「本当に米景気は大丈夫なの
か」と考える人も増えそうです。


 7月30日の放送で、米国の景気のサイクルについて話をしました。「景気の山」か
ら次の山への期間を一つのサイクルとすると、戦後の米国の景気は最も長いときで10
年強。前回の山はリーマン危機前の2007年末でしたので、再来年の2017年にはその山
を迎える可能性がある、という議論が聞かれ始めたというお話です。1997年ごろ、IT
革命がかつてない生産性の向上を引き起こし、景気循環のサイクルすら消滅し好景気
が続くのでは、といった議論が起きました。米連邦準備理事会(FRB)のグリーンス
パン元議長の発言などがきっかけになったいわゆるニューエコノミー論ですが、世紀
が変わるころ、ITバブルの崩壊というとりあえずの答えが出ています。


 景気が過熱すると、色んなところにひずみが生じるのも事実です。今回の景気のよ
うに、そもそも「利上げできるほど強いのかどうか」という議論が絶えない状態は、
裏返すとほどほどのところで息長く続く可能性を示しているのかもしれません。


 景気でいえば、「山低ければ谷も浅し」ということなのでしょうか。
 So Far So Good --日本流にいえば 「ぼちぼちでんな」という状態を続けること
ができるかどうか、じっくり見ていきたいと思います。


      (日本経済新聞社編集局キャスター長兼経済部シニア・エディター)


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