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ニュース報道の心

2015年7月31日(金)「電気料金の上昇に待った! 切り札は調達の多様性」 山川龍雄

 震災前と比べ、日本の家庭向け電気料金は平均25%、産業向けは38%上昇していま
す。この高騰を食い止めることができるのか。この人物の経営手腕にかかっているか
もしれません。7月29日水曜日のゲストは、東京電力と中部電力が折半出資して4月
末に設立したJERA(ジェラ)の垣見祐二(かきみ・ゆうじ)社長。同社は、段階的に
東電と中部電の燃料調達・火力発電事業の統合を目指しています。垣見さんは中部電
の出身で、この戦略子会社のトップに抜擢されました。


 震災後に電力料金が上昇したのは、原発の稼働停止を受け、液化天然ガス(LNG)
を燃料とする火力発電の依存度が高まったことが主因です。世界最大のLNG輸入国で
ある日本は、本来であれば、安く調達できるはずですが、実際はそうなっていませ
ん。日本の場合、LNGの調達価格は原油価格に連動する形となっており、欧米よりも
割高に購入していることが多いのです。現在は原油安の恩恵で調達コストが低下して
いますが、この状態がいつまで続くかわかりません。来るべき時に備え、手を打って
おく必要があります。


 その先兵となるのがJERAです。垣見さんが目標とする価格は、中国、韓国、台湾な
ど東アジアの中での最安値。そして、欧米とも遜色のない水準だそうです。そのため
に、どうやってコストを引き下げていくか。もちろん、東電と中部電が一緒になった
ことによるバイイングパワーが武器となります。両社のLNG調達量を合計すると年間
4000万トン。韓国ガス公社と並ぶ世界最大のLNG輸入事業者となります。


 ただ、それだけでは不十分だと垣見さんは見ています。切り札となるのは、「調達
の多様性」。様々なルートを確保し、JERA自身が積極的にLNGの生産に関与すること
で、交渉を優位に進めることが決め手になると言います。そうやって原油連動による
調達比率を引き下げておけば、原油価格が高騰した場合でも、影響を受けにくくなり
ます。もう少し分かりやすく言えば、不利な条件を提示された時に、「それならば、
別のところから、調達しますよ」と言えるカードを持つことが重要なわけです。


 垣見さんは中部電時代、大阪ガスと組んで、米国産天然ガスをLNGにして輸入する
契約をまとめた実績があります。本来、LNGの売買契約には転売禁止条項が付くこと
が多いのですが、北米産のガスにはその条項がつきません。そのため、海外の需要家
にもLNGを売るトレーディング事業も展開できます。JERAは今後、こうした生産やト
レーディングを拡充することでカードの枚数を増やし、交渉力を磨こうとしていま
す。垣見さんは、今後関心のある生産国として、アメリカ以外に、カナダや東アフリ
カのタンザニア、モザンビークを挙げました。


 調達の多様性という意味では、パイプラインの敷設も有効な手段です。パイプライ
ンがあれば、天然ガスのままでも輸入できるので、その分、コストが安く済み、交渉
力も向上するからです。日本にはかねて、ロシア極東のサハリン島沖に埋蔵される天
然ガスを、首都圏までパイプラインで持ってくる構想が存在します。米露関係が悪化
している中、この構想がすぐに動き出す気配はありませんが、垣見さんは、「中国や
韓国は(パイプラインによる調達ルートの多様化を)進めようとしている」と指摘し
ます。


 震災後、原油が高止まりしたままだったら、今ごろ、電気代は震災前の2倍に跳ね
上がっていても、不思議ではありません。そうなれば、今よりも消費が減退し、企業
の競争力が低下していたのは間違いないでしょう。日本経済は今、原油安という好運
に支えられているだけで、その土台は意外にもろいのかもしれません。だからこそ、
リスクへの備えを急がなければならない。番組で垣見さんの話を聞きながら、そんな
ことを考えました。


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