沖縄が安全保障上、重要な場所に位置するならば、それは企業がビジネスを考える
うえでも魅力があるということ。7月21日火曜日は、沖縄の可能性と宿命を同時に見
せられた思いでした。ゲストでお越しいただいた沖縄国際大学前学長の富川盛武(と
みかわ・もりたけ)さんは「ロジスティクスというのは、もともと軍事用語で兵たん
の意味。沖縄は効率的に武器や食糧を運ぶために重要な拠点と位置付けられてきた。
それが今では経済面でも意識されるようになっている」と指摘します。
那覇市を中心に半径2000kmの円弧を描けば、日本や中国、韓国を含む東アジアの主
要都市がほぼ収まります。沖縄から見て、中国・上海市や台湾・台北市は大阪市より
も近いし、フィリピン・マニラ市は東京都よりも近い。アジアの成長を取り込むうえ
で、沖縄は日本の玄関口になり得るのです。
象徴的な事例が、全日本空輸(ANA)とヤマト運輸が組んだ貨物ハブ。那覇空港
をサプライチェーンの中心に据え、製造業を呼び込もうという構想です。ANAの深
夜貨物便とヤマトの小口輸送を組み合わせ、空港や税関の24時間稼働も実現して、
「メード・イン・ジャパン」を最速でアジアに届けていく。そんな拠点として、脚光
を浴びています。
インバウンド需要も見逃せません。そもそも沖縄は日本では珍しく人口が増え続け
ている地域であり、そこに国内外の観光客増が重なっています。外国人観光客は今年
100万人を突破するのが確実視されています。こうした点に着目し、沖縄への投資を
増やす流通サービス業が目立ちます。数年前、外資系ホテルの開業が相次ぎました
が、今後は、星野リゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の進出が
予定されています。今年4月、イオンが開業したショッピングモールは県内最大級の
規模で、地元客だけでなく多くの観光客を集めています。
実は外資系ホテルやイオンモールが進出したのは、基地の跡地。富川さんは「地権
者たちは、米軍に貸すよりも、返還してもらった方が、(資産活用上)有利ではない
かと考え始めている。以前は基地を返還されたら経済的に困ると考える人の多かった
が、今は意識が変わっている」と言います。
1972年の本土復帰から43年。沖縄経済は基地抜きに成り立たないと考えられてきま
した。そんな思い込みはそろそろ捨てなければなりません。そもそも沖縄全体の所得
に対する基地関連収入の比率は5%程度。もちろん税制優遇などの沖縄振興策が、巡
り巡って、本土や海外からの企業誘致の呼び水になっている点は否定できません。し
かし、政府からの支援に依存するよりも、その呪縛から解放された方がむしろ潜在力
を発揮できるのではないかと、沖縄の人たちは思始めているのです。
「基地が沖縄の可能性をフリーズしてきた」。富川さんのこの言葉が印象的でし
た。これまで基地問題は、安保や抑止力、日米関係といった視点から議論されること
が大半でした。しかし、経済面からも考察しなければ、沖縄の人たちの本音には迫れ
ないと思います。「基地は返した方がよい」という沖縄の人たちの主張には、経済合
理的な判断も存在するのです。
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