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ニュース報道の心

2015年7月17日(金)「なぜに答えきれない政権の綻び」 山川龍雄

 今国会の最大の焦点となっている安全保障関連法案が、衆議院本会議で可決されま
した。この法案は多数の憲法学者が憲法違反だと指摘し、世論調査で多くの国民が反
対しています。安倍首相自身も「国民の理解が進んでいないのは事実」と認めていま
す。にもかかわらず、自民、公明両党が、採決に踏み切りました。当然、野党は強く
反発しています。


 そこで7月15日水曜日の番組では、政治学者の曽根泰教(そね・やすのり)慶応大
学教授をお迎えし、なぜこのタイミングで採決に踏み切ったのか。その背景をうかが
いました。曽根さんは安保法案が国民の理解を得られていない理由について、以下の
ような話をしました。「なぜ、集団的自衛権が必要なのか。東シナ海で具体的にどん
な脅威があるのか触れようとしないし、アメリカが何を求めているかも分からない。
一方でホルムズ海峡の事例を持ち出したり、違憲でない根拠として砂川判決を持ち出
したりする。それで国民に不信感が広がっている」


 中国を刺激したくないといった事情が存在するのは分かりますが、それにしても、
政府はもう少し正直に核心部分を説明する手がなかったのでしょうか。それに憲法改
正でなく、解釈で乗り切ろうとしていることや、国会で審議入りする前に米国で法案
の今夏成立を約束したことなど、手続き論も問われています。


 7月13日、国会で行われた中央公聴会において、政治学者の山口二郎・法政大学教
授は、「戸締まりした家には泥棒が入らない」という安倍総理のたとえ話について、
「戸締まりをしっかりするのが自衛力の整備。しかし、門の外まで出張っていって悪
者退治に加わることは、自宅の安全に資する行為ではない」と発言しました。たしか
に、外に出て一緒に戦えば、それだけ日本に敵意を持つ国を増やすリスクがありま
す。かといって、米国との同盟がなければ、日本が単独で戸締まりをしっかりできる
状況でもありません。そして、その米国は日本にも外に出て戦うことを求めているよ
うに見えます。集団的自衛権の必要性を巡り、賛否が割れる理由はそこにあります。


 安保法案だけでなく、新国立競技場の建設や九州電力川内原発の再稼働など、この
ところ政府は民意とは逆の決断をすることが増えています。しかも、なぜ、そうする
のか、明快な説明が不足しています。それが支持率低下につながっているのではない
でしょうか。曽根さんは番組で、安保法案の採決によって「覚悟の上だと思うが、支
持率が一時的に10ポイント程度落ち込んでも不思議ではない」と予想します。


 昨年末の解散総選挙で盤石になったと思えた安倍政権ですが、政治の世界は一寸先
が闇。いくつかの綻びが重なったことで、政局も読みづらい展開となってきました。
曽根さんは9月に予定されている自民党総裁選が「首相の無投票当選にはならないか
もしれない」という見立てを披露しました。支持率低迷を受け、党内では様々な駆け
引きが始まっているようです。結局、安倍政権を支えているのは、これまでもこれか
らも株価の上昇。ギリシャ情勢や中国株バブルについては小休止の様子ですが、世界
経済には依然として不透明なところがあります。普段から株価のチェックは欠かさな
い安倍総理。今後はその頻度が増えるかもしれません


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