6月17日水曜日のゲストは、いちごアセットマネジメントのスコット・キャロン社
長。同社は主に海外から資金を集め、日本株に特化して集中投資するファンドを運
営しています。在日通算26年、子供4人を日本で育て、永住権も取得しているキャ
ロンさんは、お世辞抜きに、日本語が上手です。番組では、コーポレートガバナン
ス・コード(企業統治指針)の策定に関する有識者会議メンバーの1人でもある
キャロンさんに、日本企業への提言をしてもらったのですが、例え話が巧みで、目
から鱗の連続でした。例えばこんな具合です。
まず、キャロンさんは「株主総会を週末に開催しよう」と呼びかけます。なぜ週末
なのか。その理由が振るっていました。「だって、日本の選挙は多くの人に投票して
もらいたいから週末に実施するのでしょう。株主総会の目的の1つは取締役の選任で
あり、企業が選挙をやっているようなもの。総会屋がたくさんいた時代ならともか
く、なぜ今も、多くの企業が平日の同じ日に集中させて開催しているのでしょうか」
次に「役員の過半数を独立社外取締役にすべき」という提言。キャロンさんはこう
続けます。「役員の過半数が社外の人でないということは、生え抜きの役員が過半数
だということです。それは、役員会と言っても、実態は社長が部下を呼んで会議をし
ているようなもの。それでは緊張感が生まれません」。
日本企業の間に広がる株主還元ブームについても、独特の表現で警鐘を鳴らしまし
た。「株主還元というのは、メタボの人がダイエットに取り組むようなものです。余
分な内部留保を株主に還元するのは良いですが、痩せ過ぎの人が内部留保を削った
ら、病気になってしまいます。あくまでも、運転資金や設備投資など、適正な内部留
保を蓄え、それでも余った資金をどうするか。バランスが大事です」。
最近、ROE(自己資本利益率)の向上を目指す企業が増えていることについても、
「数値目標だけにとらわれ過ぎていないか」と注意喚起します。「株主にとってROE
は預けているおカネの利回りのようなもの。もちろん金利は高い方がいいですが、か
といって、安全性の低いところには預けません。財務内容を悪化させてまでROEを高
めようとする一部の企業の動きには、疑問を感じます」。
投資ファンドの外国人社長というと、どうしても高圧的に日本企業に変革を迫るア
クティビストの姿をイメージしてしまいます。しかし、「もの言う株主」ならぬ「も
の聞く株主」を標榜するキャロンさんの印象は、それとは異なりました。欧米流のガ
バナンスを押し付ける風でもありません。
そんなキャロンさんは番組の最後をこう締めくくりました。「私も長年、日本に住
んでいます。だから、あえて『我々』という言葉を使わせてください。我々日本は、
独自の道を歩んで(コーポレートガバナンスでも)世界トップを目指すべきです」。
難解な日本語を分かりやすく伝える力、そして、あふれる日本愛。そんな外国人投資
家を目の当たりにして、ありきたりな表現ですが、感動しました。キャロンさんは、
根っからの日本人です。
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