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ニュース報道の心

2015年5月1日(金)地方創生に挑む「飲み鉄」石破大臣の現場力 山川龍雄

 「地方創生大臣は酒が強くないと、務まりませんね」。「そうなんですよ、やっぱ
り、地元の人と腹を割って、話さないとね」


 4月28日火曜日のゲストは石破茂(いしば・しげる)地方創生担当大臣。番組がテ
レビCMに入っている最中、こんなやり取りをしました。というのは、数日前、鹿児
島県で石破さんの"酒豪伝説"を耳にしたからです。日経プラス10では、5月
16日土曜日の夜9時に、「特別編 ななつ星in九州の旅 ―車窓から見えたニッ
ポンの底力―」を放映します。石破さんはそこにゲストとして登場、小谷真生子キャ
スターとともに豪華寝台列車「ななつ星in九州」に乗車するのですが、その際、
石破さんの口から、"やねだん"の話が飛び出します。


 やねだんは、鹿児島県鹿屋市柳谷(やなぎだに)集落の通称。以前は高齢化でさび
れる一方の村でしたが、住民が一致団結して、耕作放棄地や土着の微生物など、地元
にあるものを活用して焼酎『やねだん』などのヒット商品を生み出します。また、空
き家を"迎賓館"に変え、アーティストを呼び込むなどして、現役世代の人口を増や
しました。私は取材のために、4月26~27日に現地を訪れたのですが、そこで住
民の方から、今年1月、石破さんが現地視察に来た時の様子を聞かされました。石破
さんは迎賓館の1つに宿泊したそうですが、地元名産の焼酎を、しこたま飲んだそう
です。


 ちなみに、小谷さん曰く、ななつ星に乗車した際も、撮影後は、秘書が心配するく
らいに長時間、「飲み会」が続いたそうです。石破さんが鉄道ファン、いわゆる"鉄
ちゃん"であることはよく知られていますが、鉄ちゃんには乗車するのが好きな「乗
り鉄」や、写真を撮るのが趣味の「撮り鉄」がいます。石破さんの場合は、「飲み
鉄」。28日の番組中、小谷さんがそのことに言及すると、石破さんは「国会議員を
やって30年、あんなに楽しいことはなかった」と振り返りました。


 地方創生大臣になった石破さんは現場主義を掲げ、時間を見つけては、全国にいる
地方創生のキーマンと酒を酌み交わしているようです。地方創生を進める政治家は、
必ずしも酒豪である必要はないと思いますが、現地のホンネを引き出す対話力が求め
られます。地方が直面する課題をリアルに知っておかなければ、的確な解決策は打て
ませんし、自治体に言われるがままに、交付金をばらまく形になってしまうからで
す。


 政府は創設した地方創生関連の交付金1700億円のうち、留保していた300億
円について、10月末までに人口減少対策の5カ年計画「地方版総合戦略」を作成し
た自治体に上乗せして支給すると発表しました。ただ、私が聞く限りでは、この交付
金目当てに、見通しの甘い戦略が自治体から寄せられているようです。"奇跡の集
落"とまで言われるやねだんですら、いったん増加に転じた村の人口が、直近では再
び減少に転じています。現実は甘くはないのです。


 そんな経緯もあってか、番組では、自治体に向けて、石破さんがくぎを刺すシーン
も見られました。「これまでの地方創生のアイデアは、カンと経験と思い込みで作ら
れている傾向があった」「計画が当たろうと、外れようと、検証されることはなかっ
た」。政府は先ごろ、自治体が総合戦略を策定するのに役立ててもらう目的で、イン
ターネット上での情報提供を始めました。地域ごとの人口動態や企業間のお金のやり
取りなど、いわゆるビッグデータを活用できるものです。番組中、石破さんが最も力
を込めたのが、このシステムの具体的な活用法を説明するシーンでした。もっと緻密
な分析に基づいた計画を策定してほしいということでしょう。


 「自治体は数値目標をしっかり出してほしい。KPI(重要業績評価指標)がしっ
かりしているアイデアを出した自治体に、(交付金を)上乗せしていく」。交付金に
は常にバラマキ批判が付きまといます。「今回は違う」というのが、番組で石破さん
が最も伝えたいことのように感じました。本当に「メリハリをつけた」支給になって
いくのか、今後の推移を注視したいと思います。


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