このところ番組では、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の話題を積極的に取り上げるようにしています。というのは、米中日のアジアを巡る覇権争い、そして基軸通貨を巡る争いの歴史的な転換点になるかもしれないからです。
アジアインフラ投資銀行は、中国政府がアジアの途上国を支援する目的で設立を各国に呼びかけている構想です。当初、主要7ヵ国(G7)は参加しないと見られていたのですが、対アジア貿易の実利を重視するイギリス、ドイツ、フランス、イタリアなどが構想支持に回り、一気に流れが変わりました。3月末の参加の締め切りを前にて、これまで慎重な立場をとってきたアメリカ、日本、韓国などの動向が注目されています。
直近では、アメリカ財務省の高官が、国際基準に基づいた運営が徹底されるならばアジアインフラ投資銀行の設立を「歓迎する」と表明。世界銀行やアジア開発銀行(ADB)との協調融資を呼びかけました。アメリカにとっては、盟友であるはずのイギリスが参加を表明した段階で「勝負あった」のかもしれません。そこで、対立するのではなく、むしろ内部に入ることで、中国を牽制しようと、戦略を切り替えたように見えます。アメリカが参加を表明すれば、日本や韓国はそれに倣うでしょう。
そんな中、3月24日火曜日にゲストでお越しいただいたのは、中国や韓国など世界の金融事情に詳しい愛知淑徳大学の真田幸光(さなだ・ゆきみつ)教授。真田さんは、「アメリカがこれほど早く態度を変えるとは思わなかった。言葉は悪いが、腰砕けになっているように見える」と予想外のスピード展開に驚いている様子でした。
真田さんの指摘で興味深かったのは、中国側の狙いです。インフラ投資を金融面から支えることで、アジアの覇権争いを優位に進めようとしていることは容易に想像がつくのですが、それに加え、もう1つの狙いがあると指摘します。「米ドルに対抗し、人民元を決済通貨として拡大していく思惑があるのではないか」。
世界の決済に中国の人民元が使われている比率は、2014年12月時点で2.17%。米ドルや欧州ユーロには遠く及ばず、英ポンドや日本円にも後塵を拝しています。ただ、およそ2年前の2013年1月には0.63%だったことを踏まえれば、急速に増えているのは事実です。真田さんは「戦後、米英が中心となって確立したIMF(国際通貨基金)、世界銀行、WTO(世界貿易機関)を中心とした世界金融秩序が崩れようとしている」と指摘します。
日本はどうすべきか。流れが変わった以上、意固地になるのは得策ではないと思います。アジアインフラ投資銀行の現時点の構想は、審査基準などに不透明な点が多く、貧しい国を借金漬けにしてしまい、自律支援につながらないのではないかという見方があります。環境破壊につながる開発や持続性に難のある事業への融資が横行するのではないかという懸念もあります。 外から牽制するのか、中に入って改革するのか。傍観者でいることは、アジア諸国のためにも避けるべきだと思います。
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