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ニュース報道の心

2015年3月13日(金)被災地の鉄道を復旧させた両面作戦 山川龍雄

 「鉄道を無くして栄えた町はない。もう一度、復旧させる」。2日間、考え抜いて出した結論はこうでした。3月11日水曜日、東日本大震災から4年目となるこの日のゲストは、三陸鉄道の望月正彦社長。NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』でも有名になった、岩手県の三陸海岸を縦貫する路線を運営する、第三セクターの鉄道会社です。


 震災が起きてから2日間、避難指示が出ていた関係で身動きがとれなかった望月さんは、列車の中に対策本部を置き、今後のことをじっくりと考えたそうです。赤字続きの路線が津波によって壊滅的な打撃を受けたわけですから、ここで廃線にしてしまう選択肢もありました。しかし、自問自答を重ね、最終的に出した結論は「もう一度、やるしかない」。「最初に方向性をはっきりさせたので、その後は、迷うことなく、突き進めました」。


 2ヵ月後の2011年5月。望月さんは、「今でも忘れられない」と言う光景を目にします。北リアス線の田野畑駅。住民たちが集まって、まだ開通するかどうか分からない駅を清掃し、周辺の草むしりをしていたのです。その姿を見て、望月さんは改めて、地方におけるローカル線の担う責任の重さを痛感します。そして、全線が開通したのが2014年4月。沿線には、この日を待ちわびた住民や鉄道ファンなどが、列車に向かって手を振る姿がありました。望月さんは、今でもこの2つの光景を思い浮かべると、涙が込み上げてくるそうです。


 もちろん、赤字運営の鉄道の復旧は容易なことではありません。現在の乗客数は震災前の約8割。避難生活で住民が駅周辺から離れてしまい、通勤や通学に伴う定期券収入が大きく落ち込んでいます。それをどうやってカバーしていくか。


 望月さんが打ち出したのが、「マイレール意識の向上」と「交流人口の増加」という2つの方針でした。マイレール意識の向上とは、地元住民にもっと「自分たちの鉄道」という意識を持ってもらい、通勤、通学の足としてだけでなく、コミュニティーの場として活用してもらうことを意味します。地酒を味わう「飲兵衛(のんべえ)列車」、歌好きが集う「カラオケ列車」など様々な工夫で、地元客の増加につなげています。


 一方の交流人口の増加というのは、観光や被災地研修などのツアーを組み、外部からの乗客を増やそうという試み。こちらも『あまちゃん』の舞台となった知名度を生かしつつ、「こたつ列車」「震災学習列車」などを走らせ、インバウンド収入の増加につなげています。ちなみに、割引のある定期券収入よりも、観光や研修目的の客単価は高く、この収入で乗客数の減少をカバーしているそうです。


 地元密着とインバウンドの両面で地域の活性化を進める。これは少子高齢化に悩む全国の自治体に共通する課題です。この日はフカヨミコーナーも「被災地の復興」がテーマでしたが、「東日本はいずれ全国が直面する課題に10年先駆けて取り組んでいる。そこに地方創生のヒントもある」と大西康之編集委員は語っていました。


 番組の最後に望月さんはこう視聴者に呼びかけました。「とにかくみなさん、被災地だと意識せずに、普通の感覚で来てください。そこでおいしいものをたくさん食べ、旅を楽しんでもらえば、それが被災地の支援につながりますから」。番組終了後、スタッフ一同、「いつか『飲兵衛列車』に乗りたいね」という話で盛り上がりました。


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