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ニュース報道の心

2015年3月6日(金)TPP交渉を阻む情報共有の温度差 小谷真生子

 外交の重要テーマになっている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉。ただ、関連するニュースを日々追っていても、実際の交渉がどこまで進展しているのか見えにくい、と思っておられる方は多いのではないでしょうか。交渉は既に「TPP合意後」を具体的に考えてゆくステージに入っているそうです。5日木曜日のフカヨミプラスで、日本経済新聞の太田泰彦論説委員が解説して下さいました。


 今、交渉のボールは米国に投げられています。オバマ大統領に強力な通商交渉の権限を与える貿易促進権限(TPA)法案の成立が次のステップです。その後、交渉に参加している12ヵ国が同じタイミングの全体会合で合意できるように、日米両国は合意のギリギリ一歩手前で調整するという流れになるそうです。


 ただ、ここまで日米間の協議に時間がかかったのはなぜでしょう。太田さんは国内での「政府と民間のコミュニケーション」の取り方に日米で大きな違いがあるとおっしゃいました。それを示す例が番組でも紹介した昨年4月のオバマ大統領来日時のケースです。経済産業省が日本自動車工業会に自動車関税に関する日米協議を歓迎するという声明の「下書き」を持って行ったところ、豊田章男会長(当時)が「事前に何も聞いていない」とおっしゃったそうです。


 一方、米国にはこうした政府と民間のコミュニケーション・ギャップが起こらない仕組みがあります。「政府」「議員」「産業界」の三者が、米通商代表部(USTR)のクローズドな部屋で、交渉相手と協議した内容について「見せられる範囲」の書類を見ることができます。「見せられない範囲」とは交渉相手の反応です。そのため、交渉の全体像はつかめませんが、少なくともアメリカが交渉現場でどういった内容を相手に伝えたかを知ることはできます。そして書類を見た三者には守秘義務が課せられ、情報を漏らした場合の罰則もあります。


 日本には交渉の内容や行方について、政府が議員や産業界に話せるシステムがありません。話した相手に法律上の理由で守秘義務を課せないためだそうです。政府と議員と産業界の三者が情報を共有できないことの弊害はTPP交渉だけに限りません。様々な外交交渉を有利に進めるためにも、交渉当事者が案件にかかわる自国のステークホルダーたちと情報を安心して共有できるシステムが必要ではないでしょうか。


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