今、ロケで北欧のある国にいます。番組のキャスターになって初めての海外ロケということで、雑誌とは勝手も違い、スタッフにいろいろと教えてもらいながら、インタビューを続けています。途中経過ですが、かなり良い取材ができたという手応えを感じています。後日、放送いたしますので、ご期待ください。
というわけで、今日、取り上げるのは、出国前の2月23日月曜日にゲストで登場していただいた紀伊国屋書店の高井昌史社長です。テーマは、書籍、雑誌離れにどう立ち向かうか。出版社に所属する私にとって、他人事ではない命題でした。
この15年で、書店の数は実に4割程度も減っているそうです。高井さんはその原因として、スマートフォンやタブレットの普及、公共図書館の新刊本貸し出しの増加、新古書店による2次流通の広がり、そして、アマゾン・ドット・コムに代表される電子書籍の台頭などを、挙げました。まさに三重苦、四重苦といった状況です。高井さんは実に正直な方で、決して強がるわけではなく、置かれている苦境を赤裸々に語りました。
というわけで、「これが打開策」と歯切れのいい話ができるわけではありません。その中で活路を求めるとすれば、高井さんが話した「本屋をテーマパークに」というコメントが耳に残りました。「元来、本は楽しいものなのです。書店は、そこにいけばいつも発見があるようなテーマパークのようなところであるべき。映画も芝居も、元をたどれば、本が原作になっているものが多いでしょう。それが本の力なのです」。
ディズニーランドのようにリピーターを吸い寄せるテーマパークには、よく「宝探し」の魅力があると言います。何度行っても、新たな発見があり、ある種の飢餓感が残る。逆に言えば、何度行っても、征服感が湧いてこない。だからこそ、人々は「もう一度、行ってみたい」という気になる。ディスカウントストアのドン・キホーテのような好調な流通業にも同様のことが言えるでしょう。
その文脈で言えば、書店ほど、足を何時運んでも、「征服した」という気分にさせないところはありません。出版業界では日々、数多くの新たな書籍や雑誌が発刊され、それが本屋さんに並びます。テーマパークのような宝探しを楽しんでもらうアイテムは揃っているわけです。各種の調査を見ても、決して若者が本屋に足を運んでいないわけではありません。人々が集積するコミュニティーの場、一定の時間を費やす場としては、今も存在感があります。
あとは、そこでいかに消費をしてもらうか。顧客の視点になれば、電子書籍の利便性はやはり否定できませんし、最初から買う本が決まっている人にとってみれば、本屋に足を運ぶよりも効率的な買い物ができるのは確かでしょう。これからも、一定比率で電子書籍などに市場が流れるのは、抗えない大きな波だと思います。だとすれば、おそらくこれからの書店は、「本を売る場」から「本も売る場」へと一層変わっていくのではないかと思います。
地域のニーズを汲み取りながら、本というアイテムを使い、そこに住んでいる人々にライフスタイル全般を売っていく。これからの書店は、「人を吸い寄せる」という元来、自身が持っている力を最大限、顕在化させたところが、勝ち組になるのではないでしょうか。高井さんの話を聞きながら、そんなことを考えました。
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