2月18日水曜日のゲストは、スカイネットアジア航空(SNA)の高橋洋(たかはし・ひろし)社長。「ソラシドエア」の愛称で知られ、羽田―宮崎、羽田―熊本など、九州を拠点に運航している航空会社です。私事で恐縮ですが、個人的に大変お世話になっているエアラインでもあります。熊本県に実家のある私は、年に数回、週末に帰省して、父親とゴルフをするのが慣例行事となっています。(趣味と親孝行を兼ねた一石二鳥!)。
その際、土曜日の朝早く羽田空港を飛び立ち、父親に熊本空港に迎えに来てもらって、そのままコースに直行するのが定番となっているのですが、過去にソラシドを利用して到着が遅れた経験がありません。高橋さんにこの話をしたところ、同社は現在、就航率(欠航せずに飛ばした比率)が国内1位。定時運航率(時刻表通りに航空機が到着する比率)もトップクラスだそうです。整備士、乗務員、地上スタッフなど、全社一丸の努力によって、私の「親孝行」は支えられていたというわけです。
航空業界というと、スカイマークの経営破たんが関心を集めていますが、スカイネットは対照的に堅実な経営を続けています。ただ、2002年に就航した当初はかなりの"問題児"でした。2004年には収支見通しの甘さが表面化し、産業再生機構(当時)に支援を要請。熊本便就航の際には、機材の故障で欠航を起こし、晴れの舞台であるはずの発表イベントの日が謝罪会見になるという屈辱も味わいました。そんな苦しい時代を乗り越えて、現在は7期連続黒字を達成しているのです。
何が再生の転機となったのか。話を聞いて、印象的だったのが、数々の地元密着の取り組みです。機内サービスのドリンクメニューに、長崎県産アゴ(トビウオ)と大分県産ユズを使用したスープを採用。熊本特産の馬油のハンドクリームを機内で限定販売するなど、地場企業とのコラボレーションに注力しています。機内誌「ソラタネ」は、九州の自然や料理、文化などの濃い情報が取り上げられており、地元の私でも知らないような「へえ」の連続で、いつも機内では読み耽ってしまいます。
そして、見逃せないのが、自治体にPRの場として機体を提供する「空恋」プロジェクトです。運航している機体に地元自治体の地名を表示し、乗員たちも一緒になって、地元の魅力を伝えていくのですが、自治体からは実費を徴収するだけで、直接の利益は得ていないそうです。「地元との一体感が高まれば、やがて我々のファンになってもらい、ソラシドに乗ってもらえる。巡り巡って、顧客基盤が強化されれば、元が取れると思っています」。
そんな皮算用を語る高橋さんに、今後のエアラインの生き残り策を聞いたところ、返ってきたのはこんな答えでした。「我々は大手エアラインとLCC(格安航空会社)の"いいとこ取り"のビジネスモデルなのです。大手に負けない品質を目指す一方で、地域に根差した独自のサービスを追及する。LCCはコストを優先するため、これほどの地元密着はできないでしょう」。
羽田空港でソラシドの機内に入ると、その瞬間、「地元に帰った」という何とも言えない気持ちになります。今回、高橋さんの話を聞いて、その正体が分かったような気がしました。
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