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ニュース報道の心

2015年2月6日(金)成長分野切り拓くカメラへの思い 山川龍雄

 2月4日水曜日のゲストは、コニカミノルタの山名昌衛(やまな・しょうえい)社長。番組の最後に明かしたエピソードが印象的でした。同社が創業以来の事業であるカメラやフォト事業から撤退すると発表したのは2006年のこと。その際、ミノルタ出身の山名さんは、かつてカメラ事業を率いていたOBのもとへ、報告に行きます。頭を下げる山名さんに対し、そのOBは「君が謝る必要はない。時代は変わる。先を見た経営で、次の発展を作ってほしい」と励まします。


 この10年、コニカミノルタはすっぽりと抜け落ちた名門事業の穴を、新規事業でいかに埋めるかに腐心してきました。活路を見出したのが、商業・産業印刷分野です。大手や中小の会社のオフィスに入り込み、事務機回りのコンサルティングサービスを手掛け、顧客の生産性向上に寄与していく。同社のとった戦略は、身の丈に合った戦略だったとも言えます。キヤノンやゼロックスといったブランド力が高い大手とまともに勝負しても勝ち目は薄い。そこで、個人向けよりも法人向けに注力し、顧客への密着度を武器に、世界シェアを拡げていったのです。


 番組ではほかに、医療支援サービスにも注目しました。青森県北部では脳神経外科の手術が可能な病院はわずか3ヵ所しかありません。このような過疎地で求められるのは病院同士の連携です。そこでコニカミノルタは、県北部10カ所の病院をネットワーク回線で結び、CT画像などを共有できるシステムを構築しました。その結果、過疎地の病院は、大病院から適切なアドバイスを受けることができるようになり、手術が必要な場合には、迅速に救急車やドクターヘリで搬送できるようになりました。


 もう1つ、興味深かったのが、グローバル人材の採用です。昨年、英ロンドン、米シリコンバレー、シンガポール、中国・上海、日本の5地域にビジネスイノベーションセンター(BIC)を設置しました。新規事業の開発を現地主導で取り組めるようにするために設立した組織だそうです。各拠点には、日本から生え抜きの人材を送り込むのではなく、多くを新規採用しました。


5拠点のセンター長は異業種出身で、例えば、欧州地域のトップは、元北大西洋条約機構(NATO)のCIO(最高情報責任者)という異色の経歴の持ち主。「あえて我々の成功体験を持たない人材を取り入れることで、新しいものを創り出していく。世界のスピードに合わせて、現地で判断し、行動してもらう」。この人事からも、山名さんがいかに「成長分野への種まき」に力を入れているかが、伝わってきます。


ミノルタ時代は主にカメラ畑を歩んできたという山名さん。ミノルタと言えば、「α(アルファ)シリーズ」を輩出したカメラの名門であり、そして、コニカと言えば、シニア世代には懐かしい「サクラカラー」で知られるフィルムメーカーです。創業以来のこうした事業から撤退したことに「未練はないのか」と改めて番組で聞いたところ、返ってきた答えはこうでした。


「もちろんカメラ事業は原点ですから、思いはあります。悔しさもある。しかし、退路を断って、次の世代のために新しいものを切り拓いていく。それにカメラやフォト事業で築いた技術は今も別の事業に生かされているし、顧客に感動を与えたいという思いは昔も今も変わっていません」


情報化、グローバル化、規制緩和の波が押し寄せる中で、1つの事業が誕生し、旬を迎え、衰退していくまでの期間はかつてないほど短くなっています。事業の短命化が進む中、いかに将来に備えて成長分野に種をまき、業態を転換させていくか。多くの企業に共通するこの命題について、山名さんの話は、示唆に富んでいました。


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