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ニュース報道の心

2015年1月30日(金)世界の火種はロシアとEU構造改革 小谷真生子

 1月19~24日、スイス南東の町・ダボスで、今年も世界経済フォーラム(ダボス会議)が開かれた。140カ国から各国の政府、ビジネス、メディアなどを代表する2500人のリーダーたちが集い、世界で起きている事柄や将来の問題について話し合った。


 セッションはオフレコ、オンレコを合わせて約300。会議の出席者には開催直前にアプリが配られ、ほかの出席者とメールのやり取りをしたり、セッションの概要を調べたりできる。世界中の著名な人たちが、まるで学生のように足早に会場内を行き来し、朝から夕方まで関心のあるセッション会場に向かう。主催者から依頼されてパネリストになる人もいれば、聴衆として最新の情報に懸命に耳を傾ける人もいる。昨年は、緒方貞子さんと会場内で立ち話しをしていたら、突然「シリアがテーマのセッションがあるから、もう行かなくては」と慌ててセッション会場に向かわれたのが印象的だった。こんな光景もダボス会議ならでは。とにかくみんな忙しい。


 今回の会議では、日本経済新聞社の実哲也論説副委員長と1月23日にダボスから生中継をお伝えした。実さんは2012年から世界経済フォーラムに招待されているメディア関係者のお一人。その実さんが気になることをおっしゃっていた。「ロシア問題がエスカレートする危険性がある」というのだ。


 去年の会議では今まさに深刻化しているイスラム国に関するテーマが大きく取り上げられた。実さんによると、今年は同じ地政学リスクでもロシア問題の存在感が大きく、特にEUの経営者、エコノミストがロシア問題をかなり重要視していることがわかったという。あるセッションでロシアの金融関係者が「ロシアに対する西側諸国の経済制裁は戦争に等しいのではないか」などと発言するのを聞き、「1980年代後半に崩壊したはずの東西冷戦の流れがここに来て変わったと感じている」と話す。


 また、実さんが今回の会議でよく耳にしたのが「構造改革」という言葉だ。特にEUについてこの言葉を聞くケースが多かったという。私がダボスでインタビューしたニュージーランドのキー首相もEUの構造改革に言及した。キー首相はメリルリンチやFRBにも在籍していた金融通。ECBの量的緩和策がダボスからの生中継の前日に発表されたのを受け、「EUは延命策をとったが、根本的な構造改革に早く着手せねばならない」と話していた。


 実さんも「量的緩和は歓迎するが、時間稼ぎであり、ECBだけにたよっていてはいけない」と強調する。「必要な改革の内容は国によって違うが、労働市場改革、歳出改革そして何より金融改革が重要」という。特にEUの金融機関に対するストレステストの見積もりが甘く、「不良債権をまだ多くの銀行が抱えているのではないか。金融緩和しても、銀行の体力は万全ではない」と危惧していた。


 ダボス会議の役割は世界に潜在しているあらゆる火種を顕在化し、早い段階で各国に問題提起することだと思う。13年には女性の社会進出度の評価が国ごとに発表され、日本は135カ国中101位だった。この結果を受け、「女性の社会進出」が日本の官民あげてのテーマになった。14年の会議ではイスラム国が話題だった。ただ、女性の社会進出もイスラム国も、日本の対応が本格化したのは会議の翌年になってからだ。


 今回、実さんが感じた「ロシア問題」と「構造改革」が世界で共有すべき問題の火種だとすると、当事者はロシアやEUにとどまらない。近い将来、日本に飛び火することを意識し、早めに備えを考えておく必要があるのかもしれない。


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