1月14日水曜日のゲストは、ダイヤ精機(東京都大田区)の諏訪貴子社長。同社は自動車部品用の精密測定器などを製作する従業員30人あまりの会社で、諏訪さんは"町工場の星"と注目を集めています。1971年生まれの43歳。急逝した父親の後を32歳で引き継ぎ、経営難に陥っていた会社を再建。今では講演依頼が殺到し、時の首相まで見学に訪れるような優良企業に変身させました。番組では、中小企業の悩みである人材の採用・育成に焦点を当てましたが、諏訪さんの取り組んだ改革はいずれも「手作り感」満載で、目からうろこの連続でした。
まず、採用。諏訪さんによれば、「親を味方につける」のが鉄則だそうです。「若者がこの会社に応募してみようと思った時、最後に背中を押すのは親」。モノづくりを手掛ける会社のホームページやパンフレットは、製品や技術をアピールするものが目立ちますが、諏訪さん曰く、「むしろ親が気にするのは、会社の雰囲気や、どんな人たちと働くのか」。そこで職場の風景や社長が笑っている写真をたくさん撮り、ホームページやパンフレットに散りばめたそうです。
次に面接。応募者と話をしている最中、諏訪さんは突然、隣に座っている面接官と一緒にコントを始めるそうです。その際、テンポよく、切り返せるかどうか、若者の反応を見ます。会社の雰囲気にうまく馴染めるかどうかを見極めるのが目的の1つ。もう1つが安全上の理由だそうです。「当社は危険を伴う機械を扱っている会社なので、ボーっとしていると怪我をしてしまう。咄嗟の反応力があるかどうかは、とても大事なのです」。]
さらに、入社した社員とは、しばらくの間、諏訪さん自身が「交換日記」のやり取りをします。入社当初の不安を取り除くのが目的ですが、諏訪さんはそこから、一人ひとりの性格も読み取ります。例えば、「几帳面な人は精密加工向き」「ポイントをバランスよく書ける人はリーダータイプ」「余白の多い人はコスト意識に欠ける」といった具合。経営資源の限られた中小企業では、人材を遊ばせておく余裕はありません。社員の持てる能力を最大限引き出すために、独自の方法で、適材適所の人事に努めているわけです。
こんな具合に、若手確保に注力してきたダイヤ精機ですが、一方で、シニア社員を冷遇してきたわけではありません。諏訪さんは就任早々、60歳定年制を変更し、65歳まで雇用する仕組みを作りました。現在は事実上、本人が希望する場合は70歳を超えても働き続けてもらっています。技術の伝承に関しては、「背中で見せる式の教え方は、今の若手には通用しない」と言い、ベテラン社員には、若手に積極的に話しかけてもらうようお願いしています。一方の若手社員には「失敗は挑戦した証」と伝え、むしろ失敗の少ない社員ほど、注意喚起するのが諏訪流です。
番組に先駆けて、工場を見学させてもらいましたが、「若い人が多い現場」というのが第一印象でした。諏訪さんは、「最初に社長に就任した時には、私よりも年下は3人しかいませんでしたが、今では20代が12人います。10年かけて、人口構成はきれいなピラミッド型になりました」と言います。ただ、若手が多いからといって、ベテラン社員が肩身の狭い思いをしているわけではなく、むしろ慕われているという雰囲気が現場からはしっかりと伝わってきました。トークプラスの冒頭で流したVTRの中で、19歳の社員が、シニア社員に対し、「カッコいい」「将来はあの人のようになりたい」と語ったのが、印象的でした。この会社が再建を果たした理由を、何よりも雄弁に語っているような気がします。
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