「今の経済状況は、1980年代後半のバブル景気に向かう局面と似ています」。12月15日月曜日のゲストは、第一生命経済研究所の永濱利廣・主席エコノミスト。様々な統計データを駆使して、経済動向を分かりやすく解説することで、定評があります。その永濱さんが番組で、冒頭のような気になる予言をしました。
80年代後半、プラザ合意後の円高不況を乗り越えるために、当時の政策当局は、大胆な財政・金融政策を実施しました。また、中東諸国の供給拡大に加え、原子力発電の普及もあって、当時は原油価格がピークの3分の1近くまで下がっていました。結果、日本経済は急ピッチの景気回復を果たすと同時に、株式市場や不動産市場に過剰な資金が流入する、いわゆるバブル景気を引き起こしたわけです。
翻って、今回。消費税引き上げ後の景気後退局面を乗り切るために、積極的な財政・金融政策が続けられています。そして、シェールオイルという代替燃料の登場もあって、原油価格が急落しています。この状況を踏まえ、永濱さんは日本経済の先行きは明るいと言います。
「もはや80年代後半のような土地神話は崩壊しており、人口も減少しています。従って、バブル発生の可能性は低いでしょう。それでも、バブルに向かった当時と同じくらい景気が良くなる材料は揃っているのです」。そして、この先2年ほどかけて、日経平均株価は2万5000円程度まで上昇し、為替は1ドル130円近くまで円安に振れる可能性を示唆しました。
それにしても、ここへきての原油価格の急落は、日本経済にとって、想定外の福音と言えます。確かに現在のマーケットの動きを見ていると、急落が金融市場のかく乱要因となっています。資源国ロシアのルーブルが急落したほか、エネルギー関連の株や社債の価格が下落しています。この先も投資家心理の冷え込みが続くのか、注視していく必要があります。
とはいえ、常識的に考えれば、原油のほぼ100%を輸入に頼っている日本経済にとって、この状況はプラスが大きいと見るべきでしょう。住友商事グローバルリサーチの高井裕之社長によれば、日本の燃料輸入コストは年間およそ25兆円。原油価格は夏場のピークから4割下がっており、そのうち半分は円安で相殺されていますが、それでも2割の負担軽減効果があります。つまり、25兆円の2割、5兆円程度のコスト削減効果があるわけです。これがこの先、企業収益を押し上げ、所得や消費にプラスをもたらすでしょう。
つくづく思うのですが、挫折を経て、再び政権を掴んだ安倍晋三首相は、まるで憑き物が取れたかのように、強運が続いているように見えます。原油価格の急落もその1つで、もし、夏場のままの価格上昇が続いていたら、円安とのダブルパンチで、国民生活が疲弊し、衆院選の空気も変わっていたでしょう。まるでアベノミクスの矢が、別のところから飛んできたようなものです。こうした風も受けながら、「実感を伴った」景気回復を果たすことができるのか。2015年は、世界が注目するアベノミクスの成否が、浮き彫りになる年だと思います。
記事は日経プラス10クラブ会員向けのメールマガジンで毎週金曜日に配信しています
詳しくはこちら⇒http://www.bs-j.co.jp/plus10/club/