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2016年4月29日(金)多様性を受け入れよう! 木村恭子

 私事で恐縮ですが、15年ほど前から大学で講義を受け持ち、現在は早稲田大学大学
院政治学研究科で、1コマだけですが、ジャーナリスト志望の学生を対象に実践形式
の授業を担当しています。


 4月から新しい年度が始まり、私の授業を登録した学生の顔ぶれを見てびっくり!
8人のうち7人が中国からの留学生でした。(しかも、全員女性。)中国人の留学生
は5年前に初めて授業に受け入れました。そのときは2人だけでしたが、それでも非常
に戸惑った記憶があります。


 私は番組でもおわかりのように、早口です。留学生が聞き取れないのではないかと
思い、ゆっくりと話すように心がけたこともありました。記事を書くトレーニングの
時には、留学生は日本語での執筆は大変だろうと思い、ほかの学生よりも甘口にフィ
ードバックをしたところ、「先生、私にもっと厳しく指導してください!」と逆にハ
ッパをかけられる始末。


 その後、授業に参加する留学生が徐々に増え、1人のフランス人を除いては全てが
中国人でしたが、ここまで比率が高い年度は初めてです。内心、「留学生に人気のあ
る私って、グローバルじゃない?」とちょっとご満悦だったのですが、研究科事務室
の話しを聞いて、妙に納得。今年度の4月入学の学生48人のうち、何と!35人が留学
生で、外国人比率は過去最高とのこと。ただでさえ留学生が多いわけですから、私の
授業でも人数が多くなるはずですね。


 留学生にいつも驚かされるのは、おしなべて日本語力が高いことです。ただ、かつ
ては授業の足を引っ張りかねないレベルの日本語力の留学生もいました。日本人の学
生が授業中、その学生に対してあからさまに不快感を示し、教室に微妙な空気が流れ
たことも少なくありませんでした。


 日本人学生が「ここは大学院。しかも記事を書く授業なんだから、日本語をきちん
とマスターしていないのは迷惑だ」と主張する気持ちもわからないでもありません。
ただ、相手は留学生。「日中の懸け橋になりたい」と来日して勉強している気持ちを
何とかくんで対応はできないものだろうか。ずっと「解」を求めていました。そして
先日、思わず心の中でポンと膝をたたく出来事があったのです。


 ある企画で大野智久さんという、東京都立国立高校(実は、私の母校です)の生物
科の教師に取材しました。今の時代の学生に必要な資質を聞いたところ、「多様性を
受け入れること」との答えが返ってきました。


「自分にとって相いれない人がいたとしても否定しない」「多様性を認めることがで
きると、いちいち質問をする『面倒な人』は、その人のおかげで自分が知っているこ
とと知らないことを峻別することができる『ありがたい人』に変わります」と大野先
生。


 なるほど。これは、まさにグローバル社会を生きるうえで、学生に限らず誰にとっ
ても大事な心構えだと合点がいきました。自分とは異なる対象に対して、否定するの
ではなく、また迎合するでもなく、理解する姿勢。そのためには、異なる文化的背景
や考え方に日ごろから触れていることが有用でしょう。


 となれば、以前、日経の英字媒体「Nikkei Asian Review」(NAR)のデスクをして
いたこともある私が得意とするテリトリーではありませんか!多様性を受け入れるマ
インドを養う手段として、海外のニュースを活用するのはいかがでしょうか。「日経
プラス10」でも毎日、英フィナンシャル・タイムズ(FT)の記事を紹介しています。
「英語を直接読むのは、ちょっと――」という方は、日経新聞や電子版でNARやFTの
翻訳記事も読めますので、ぜひご活用ください。


(日本経済新聞社編集局 編集委員兼政治部シニア・エディター兼キャスター)


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