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2014年11月21日(金)解散の信を問う選挙 山川龍雄

 よもや師走に選挙が行われるとは思いもしませんでした。率直に言って、なぜ解散総選挙なのか、今でも釈然としません。解散があると、決まって多くの人がネーミングをつけますが、私もその慣例にならうとすると、「解散したことの信を問う選挙」と命名します。それほど今回は、解散したこと自体に疑念を抱く人が多いように感じます。


 おそらく安倍晋三総理が消費増税の延期と解散を意識したのは、小渕優子・前経済産業相らが辞任に追い込まれたあたりからでしょう。先々の政治日程をにらみ、早いうちに選挙を実施した方が有利と考えた安倍総理の腹の内は、「消費増税先送りの信を問う」が、解散の大義だったはずです。増税の先送りが争点になれば、国民の3分の2以上がそもそも賛成しています。仮に民主党内で意見が割れれば、それも選挙戦にはプラスに働きます。


 ただ、事態はそれほど都合の良い方向には進みませんでした。安倍総理にとって、誤算だったのはGDP(国内総生産)の結果でしょう。11月17日発表の7~9月期の実質GDP速報値は年率換算で1.6%減と事前の予想を下回り2四半期連続のマイナス。一般的な定義に照らせば、日本はリセッション(景気後退)に入ったことになります。総理も事前に数字が悪いことは聞いていたはずですが、マイナス成長になったのは想定外だったでしょう。結果、増税先送りに反対する野党は1つもなく、解散の大義は「先送りの信を問う」ではなく「アベノミクスの是非を問う」方向に進みました。


 総理も腹をくくったのでしょう。18日の記者会見ではこう語りました。「アベノミクスに対して失敗した、うまくいっていないという批判があります。しかし、ではどうすればよいのか。具体的なアイデアは残念ながら私は一度も聞いたことがありません。批判のための批判を繰り返し、立ちどまっている余裕は今の日本にはないのです。私たちが進めている経済政策が間違っているのか、正しいのか。本当にほかに選択肢があるのかどうか。この選挙戦の論戦を通じて明らかにしてまいります」。この発言は、本人自身が、「アベノミクスの信を問う」選挙だと表明したことにほかなりません。


 ただ、その後の野党の攻勢やメディアの論調などを見ていると、争点は、この総理の意図とも、ずれる方向に進んでいるように見えます。世間の関心は、今も「なぜ解散するのか」というところで立ち止まっているような感じがするのです。あれほどこだわっていた女性活躍推進法案や国家戦略特区法改正案を国会で通すことよりも、12月14日に選挙をすることを優先した本音がどこにあるのか、多くの国民は薄々分かっています。衆院選の費用は約700億円。それほどのコストをかけてまで、師走の忙しい時期に選挙を実施する意味を、多くの国民は納得できずにいます。


 私が心配なのは、ここで選挙を実施することで、アベノミクスの「第3の矢」が曲がってしまわないかということです。選挙になれば、政治家は票田を意識します。安倍総理は「どんな岩盤も私のドリルから逃れられない」と言いました。しかし、実際には岩盤規制は残ったままです。ここで既得権層におもねる政策が出てきたり、バラマキ型の経済政策が出てきたりすれば、その時こそがアベノミクスの危機ではないかと思います。総理が会見で強調したように、雇用や株価など、重要な経済指標は改善しています。それゆえ、ここで構造改革が中断するのが残念でなりません。選挙期間中、安倍総理が振り上げたドリルを降ろさないよう、選挙公約や経済対策の中身を注視していきたいと思います。


 最後に一言。それにしても野党もだらしないと思いませんか。元をたどれば、政権交代を担えるような野党が見当たらないことが、安倍総理を「大義なき解散」に走らせたわけですから。


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