日経おとなのOFF
毎週日曜日 夜10時00分 「日経おとなのOFF」がテレビになりました
安吾は、20歳のときに市電から降りたところを車にはねられ、頭蓋骨に亀裂が入る大怪我を負う。その後、2年間水薬を飲み続け、自身が「このまま廃人になるんじゃないかという恐怖をぬぐいきれなかった」と回想するほどの経験をしている。その後の"生"への肯定論、人生は道化だ、という意識はこのときに芽吹いたものとも言われる。壮絶な人生を送った安吾。拠り所とした『染太郎』に、"生"を報告し終え、そして息を引き取るというのは、戯作性に満ち溢れた最期だった。
「『染太郎』は、モノの分別が分かる大人にこそ愛され続けていきたい思いがある。そういうお店としてやってきた自負もあるし、簡単に時代に飲まれるようなお店ではありたくないんです(笑)。大人にこそ支持を集められるようなお店でありたいですね」(﨑本さん)
お好み焼きを頼もうとしたら、「焼きそばを食べてほしい」とご主人がいう。理由を尋ねると、目が笑う。

「焼きそばだけは作り方にちょっとしたコツがある(笑)。焼きそばも美味しいんです。それこそ初代が愛した味ですから。ですが、基本は作り方・食べ方にこだわりません。みなさんが楽しく、それぞれのやり方で召し上がっていただくのが『染太郎』ですからね」(﨑本さん)
そう言われたら注文せずにはいられない。おまけに作ってほしくもなる。無頼派が愛した焼きそばが、鉄板の上で踊っている。生きているからこそ、昔ながらの最高の焼きそばにも巡り会える。そんな安吾の声が聞こえてくるかもしれない。一度、訪れてみてはいかがだろうか。



