日経おとなのOFF
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破 天荒。安吾ほど、この言葉が似合う作家もいない。催眠薬アドルムの中毒で東大病院神経科に入院。発作、暴力行為の挙句、三度の留置場入りを体験し、伊東競輪場の順位結果が不正であると告訴事件を起こし、果ては国税庁に対しては税金不払い闘争を仕掛けるなど、もう無茶苦茶である。半狂乱に陥った安吾が、壇一雄宅にライスカレー100人前を注文した事件などは、もはやファルス以外の何物でもない。壇一雄は、発作で暴れる安吾の面倒を見てきた一人だが、「次から次へと運ばれてきたが、100人前には到達しなかったと思う」などと冷静に振り返れるあたり・・・素敵としか言い様がない。

もちろん、『染太郎』でも安吾の勇行(いや蛮行か?)は健在である。熱された鉄板に手を付いても火傷をしなかったというエピソードは、自ら色紙に書き起こし、今なお手をついた2番テーブルの頭上で確認することができる。しかし、なんといっても安吾と『染太郎』の物語といえば、"安吾が最後に訪れた店"という終幕の場面だろう。
『安吾新日本風土記』のため高知取材から東京に戻った安吾は、『染太郎』で時間を潰していた。飛行機が遅延し到着が遅れたから、だった。というのも、当時、安吾は群馬県桐生市に居を構えていたため、群馬行きの電車がタイミングよく見つからなかったためだ。いつものように振舞っていた安吾だったが、その二日後、桐生の自宅にて脳出血のため50年の生涯に幕を閉じてしまう。飛行機が遅延しなければ、『染太郎』には寄っていなかっただろう。人生は面白い。




