番組表

Bunjin東京グルメ

第9回 『松栄亭』
~模倣できないオリジナルの味~(前編)

テキストサイズ

2014.02.10

現在の4代目である堀口毅さんは言う。
「ケーベル先生から、「毎度同じではつまらないだろうからたまには違うものを作ってあげてほしい」と頼まれたと聞きます。そこで初代は、豚肉・玉ねぎ・たまご・小麦粉を使い、即席で"洋風かきあげ"を調理したらしいです」

Photo01

漱石はいたくその味を気に入ったという。その姿を見て、"来客を夕食に招くことが好きだった"主人も目を細めたに違いない。ケーベルは大学と自宅を往復するだけの、極めてシンプルな生活に満足していたと言われる。客人をもてなす料理が、歓談の場に一層の話題をもたらしたことも、人知れぬ満足感につながっていたのではないか。西洋化に厳しかった先生が心を許した西洋料理人との信頼関係。今も4代目によって大切に保管されているという"初代とケーベル先生がともに写った写真"には、味わい尽くせないほど凝縮した思い出が詰まっているのだろう。

ケーベル先生が東京を離れたことを機に、1907年(明治40年)、岩吉氏は『松栄亭』を創業させる。
「うちの祖父(2代目)が5歳のとき、来店した漱石さんに頭をなでられたと言っていました。その後、お店は関東大震災で焼失してしまい、『松栄亭』も新装します。ですが、代々、受け継がれてきた誇りは変わりません。漱石さんも褒めたという味を貶めるようなことはできませんから」(4代目)

※お店の情報は次ページに掲載しています。

pagetop