日経おとなのOFF
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「文
科大学へ行って、ここで一番人格の高い教授は誰だと聞いたら、百人の学生が九十人までは、数ある日本の教授の名を口にする前に、まずフォン・ケーベルと答えるだろう」(『ケーベル先生』)
帝国大学(後の東京帝国大学)時代、夏目漱石はケーベル先生の講義に幾度となく出席し、その深い英知に心服し、次第に交歓するようになる。ケーベルは、日本的な芸術を尊重し、文明開化とともに流入する西洋の文化・芸術を模倣したものを毛嫌いした。後に漱石は、日本人が英文学を学ぶことに違和感を覚え始めるが、彼の葛藤はケーベルの影響を色濃く反映した結果ではないかと思う。

「何時でも閑な時に晩餐を食べに来いと云われてから、行かずに経過した月日を数えるともう四年以上になる」(『ケーベル先生』)
彼は大学時代だけではなく、その後も交友を深め、先生宅に何度も足を運んでいた。その台所で腕を振るっていたのが、専属料理人・堀口岩吉氏であった。真贋にうるさい先生に認められ、後に『松栄亭』の初代主人となる人物である。




