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Bunjin東京グルメ

第8回 『蓮玉庵』
~『雁』の世界をひも解きに~(後編)

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2014.01.29

『雁 』に登場するお玉は、鷗外の隠し妻であった児玉せきだと言われる。ドイツで知り合った情人・エリーゼの幻影もあったかもしれない。先妻・登志子とは、性格の不一致、美人ではないなどの理由から、冷めきった愛情とともに暮らし、わずか1年半で離婚。再婚相手に選んだ志げは、ヒステリックな性格が災いして人から疎まれる性格だったものの「美術品ラシキ妻」と鷗外が自画自賛する美人(18歳年下)だった。末造の正妻・お常はまるで登志子のような存在で、妾のお玉はその後鷗外が愛した女性たちを見るかのようだ。

「この感情には自分を岡田の地位に置きたいと云うことが根調をなしている。しかし僕の意識はそれを認識することを嫌っている。僕は心の内で、「なに、己がそんな卑劣な男なものか」と叫んで、それを打ち消そうとしている。」(『雁』)

"僕"の声は、鷗外の葛藤そのものだろう。しかし、岡田はお玉を暗に「不しあわせな雁もあるものだ」と表し、"僕"とともに蓮玉庵の蕎麦を食べに行く。

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「こっちを見ている女の姿を認めて、僕の心は一種異様な激動を感じた。(中略)女は自分の家よりは二三軒先へ出迎えていた。」(『雁』)

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