日経おとなのOFF
毎週日曜日 夜10時00分 「日経おとなのOFF」がテレビになりました
平野屋には岡本かの子も宿泊しており、偶然芥川と知り合ったという。お菓子が届いていれば、「お一つどうですか」と嬉々としてかの子に、最中を手渡す芥川の姿があったかもしれない。手渡すことのできる距離感。その距離感を紡ぐことができるお菓子は、真心そのものだと思う。良いお菓子は、心に届く。喜作さんの作る最中は、舌を通り過ぎて、神経が衰弱していく芥川の心にも届いていたに違いない。

「小生目下胃腸を害し居る為あの一口最中も一度に三つしか食べられず太だ(はなはだ)残念ですが如何とも致されません」(『芥川龍之介全集 第二十巻』)
胃腸を崩しても最中は三つ食べる。そんな一面を知って、"あの"凄みのある肖像写真を見てみると、ちょっと親近感のある芥川に見えてくる。それもまた、最中が架け渡した作者と読者の距離感、なのかもしれない。
(後編は、1月1日(水)に更新する予定です。)




