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ニュース報道の心

2017年3月24日(金)モヤモヤが残った「証人喚問ウイーク」 木村恭子

 今週は、月曜日(20日)に豊洲市場への移転を決めた当時の石原慎太郎元東京都知事を都議会百条委員会が証人喚問し、木曜日(23日)には、学校法人「森友学園」(大阪市)の理事長退任の意向を表明している籠池泰典(本名・康博)氏に対する証人喚問が衆参両院の予算委員会で行われ、まさに「証人喚問ウイーク」とも呼べる1週間でした。

 証人喚問は、都議会百条委で12年ぶり、国会でも5年ぶり。そんな、めったに行われない証人喚問が同じ週に実施されるというのは、とても珍しいことです。

 皆さんも様々な思いでフォローされたかと思いますが、私が気になった1つは、両方の問題に共通する「土壌対策費の不透明さ」です。

 豊洲市場問題では、都は土地の売買契約で最終的に860億円に上った土壌汚染対策費について、東京ガスの負担分を78億円とし、その後の負担を求めていませんでした。この追加負担分の免除を誰が、どういった過程で決定したのかを追及することが百条委での焦点の1つでした。

 また、森友学園をめぐる疑惑の発端となった国有地の売却価格についても、名目は地下に生活ごみなどの埋設物があり、撤去費用として見込まれた金額としての8億円のディスカウントでした。この金額は過剰に見積もっているとの疑いが濃厚だと指摘されています。

 ただ、いずれの疑惑も、一連の証人喚問を経ても納得できる説明があったとは言い切れず、モヤモヤが残ったのは、私だけではないでしょう。

 結局、いったん起きてしまった疑惑を遡って解明しようとしても、当事者が「記憶にございません」で済ましてしまうリスクや、時間や労力のロスが生じ、事後の解明には限界があります。しかも、国民が置いてきぼり感さえ覚える証人喚問が、あっちでもこっちでも行われている現状は、都や国(財務省)のコンプライアンスや責任感の欠如のあらわれともいえ、猛省を促したいです。

 その意味で、一都民としては、豊洲市場をめぐる様々な問題点をつまびらかにした小池百合子都知事の存在は大きく、東京五輪・パラリンピックまで、まだ数年ある昨年の段階で都知事が新しくなったことは歓迎すべき、歴史の偶然とも思えます。

 ただ、いただけないのは、小池氏が「判断はまだ早い」と市場移転の方向性を曖昧にしたままでいることです。築地市場は、発がん物質のアスベスト(石綿)や地下の土壌汚染などで、小池氏がこだわる「安全」も「安心」も限界状態で、時間を無駄にしている余裕はありません。

 一方、小池氏が7月の都議選で豊洲市場問題を争点にするとみる自民党東京都連は、早期の豊洲市場への移転実現を掲げ、逆に移転の可否を留保している小池氏を追及する構えです。しかし、これも、ちょっと消費者を置いてきぼりにしている感じがします。

 いくら「豊洲市場の地下水は飲み水などに使用しない」とはいえ、鮮魚といった口に入れる生ものを取り扱う場で、有害物質が「環境基準の100倍検出された」などといった検査結果が何度も公表されれば、「安心」に思えない人が少なくないのは当然のこと。小池氏に、いま望みたいのは、(1)豊洲市場が「安心」になるための要件は何か、(2)もし「安心」が無理なら、築地市場を再整備するのか、(3)豊洲の安心確保も築地の再整備も難しいなら、第三の場所はどこなのかーーといった、「過去」の経緯とは切り離した「今」についての納得のいく説明です。

 間違っても、一部で実施が取り沙汰されている「住民投票」はなさらないでくださいね。それは、知事の責任放棄以外の何ものでもありません。

 最後に、昨年6月に英国が欧州連合(EU)からの離脱を国民投票で決めた際にも、この場で紹介しました、ノーベル経済学賞も受賞し、「新自由主義」の旗手と呼ばれたフリードリヒ・ハイエク氏の著書『自由の条件』("The Constitution of Liberty")からの引用文を紹介して、筆を置くこととします。

 「教条的な民主主義者は、できる限り多くの問題を多数投票によって決定することを望ましいとみなす一方、自由主義者はこのようにして決定されるべき問題の範囲には、はっきりした限界があると信じる」


日本経済新聞
編集委員兼政治部シニア・エディター兼キャスター
木村恭子


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